日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD23] 重力・ジオイド

2015年5月27日(水) 16:15 〜 18:00 102A (1F)

コンビーナ:*西島 潤(九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門)、青山 雄一(国立極地研究所)、座長:西島 潤(九州大学大学院)、宮崎 隆幸(国土交通省国土地理院)

17:00 〜 17:15

[SGD23-04] 反作用低減システムを有する小型絶対重力計用投げ上げ装置の性能評価

*酒井 浩考1新谷 昌人1坪川 恒也2 (1.東京大学地震研究所、2.真英計測)

キーワード:絶対重力計, 投げ上げ装置, 反作用低減システム, 重力, 噴火予知, 地下密度構造の推定

本研究で開発した装置は、落体を投げ上げる時に生じる反作用を低減する機構を導入した小型絶対重力計用投げ上げ装置である。絶対重力計は、重力加速度を8-9桁の精度で測定する装置である。この装置は一般的に、重力基準網の構築の際、基準重力点での重力測定に用いられる。その他の使用法としては、火山におけるマグマの移動調査に用いられ、そのデータである重力変化から噴火予知や地下の密度構造の推定を行おうと様々な研究が進められている。しかし、絶対重力計は高精度実現のために、装置が大型化してしまい、火山観測で用いる際は設置場所が限定されるという問題点がある。具体的には、絶対重力観測をふもとの基準点で行い、相対重力計を携帯して基準点と観測点を往復することで、重力値を測定する。しかし、この手法では観測に手間がかかるほか、相対重力計のドリフトによる見かけ上の重力変化が起こり、測定精度が悪くなることが考えられる。さらに、火山活動時では、観測地点での測定に危険が伴い、火山噴火直前の重要なデータを測定できない可能性も考えられる。しかし、小型絶対重力計が完成し、火山体に絶対重力計を面的に配置できるようになり、データをネット経由でやり取りできるようになれば、火山活動時でも安全に、精度のよい重要なデータを取得できるようになるはずである。これらのことを実現するためにも、小型絶対重力計の開発が必要であると考えている。
 絶対重力計の小型化を実現するために、本装置では落体を投げ上げる投げ上げ方式を採用した。この投げ上げ方式の優位性としては、落体を自由落下させる自由落下方式を採用した既存の絶対重力計と比べて、落体を持ち上げる昇降台が不要なため小型化できる点、そして落体を持ち上げる必要がないため測定回数を多くとれる点、光の有限性による重力値への影響や残留気体による影響を相殺でき系統誤差を小さくできる点である。また、本装置は、ピエゾ素子の変位を増幅する変位拡大装置を用いることで、落体をたった3mm投げ上げることで絶対重力値を測定できる点も大きな特徴である。さらに、この装置では落体を投げ上げた時の反作用を低減する機構が備わっている。というのも、落体を投げ上げただけでは、投げ上げ時の反作用により干渉計が振動し、データに大きな系統誤差が生じたためである。この系統誤差を改善するために、反作用低減システムを導入した。具体的な手法としては、落体を投げ上げるためのピエゾ変位拡大機構を取り付けた板の反対側に、同じピエゾ変位拡大機構を取り付け、これら2つのピエゾ変位拡大装置に同じ信号を与え上下対称な動きをするようにする。そして、落体を投げ上げると同時に反対方向にばねの付いたおもりを打ち出し、同時に元の位置に戻ってくるようにすることで、反作用を打ち消すことを試みた。さらに、ピエゾ変位拡大装置の動きによって振動ができるだけ発生しないようにするため、ピエゾ変位拡大装置の加速度ができるだけ連続になるよう設計した信号をピエゾに与えている。これらの機構により、反作用を打ち消す前の振動加速度を80%以上低減することができた。本講演では、2月に行った江刺地球潮汐観測所での性能評価等について、開発状況を報告したい。