日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW27] 流域の水及び物質の輸送と循環-源流域から沿岸域まで-

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 301B (3F)

コンビーナ:*中屋 眞司(信州大学工学部土木工学科)、齋藤 光代(岡山大学大学院環境生命科学研究科)、小野寺 真一(広島大学大学院総合科学研究科)、知北 和久(北海道大学大学院理学研究院自然史科学部門)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、小林 政広(独立行政法人森林総合研究所)、吉川 省子(農業環境技術研究所)、奥田 昇(総合地球環境学研究所)、座長:入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

10:30 〜 10:45

[AHW27-07] キルギス・イシククル湖及び集水域諸河川における水質特性と物質循環

*齋藤 圭1小寺 浩二2前杢 英明2 (1.法政大学大学院、2.法政大学文学部地理学教室)

キーワード:塩湖, 閉塞湖, 乾燥地域, 水質組成

1. はじめに
 塩湖は、淡水湖よりも比較的数が少なく、また乾燥地域という過酷な環境の下に存在している故に、淡水湖よりも比較的研究の数が少ないと言われている。(A.Lerman 1984)イシククル湖の場合、集水域諸河川から運搬される物質がどのようにイシククル湖へ影響を与え、水位の低下に伴い、湖の水循環がどのように変化していくのかという議論が極めて少ない。また、極地における水質機構の解明は、地球システムの解明、淡水湖との比較研究をする上で意義があると言える。そこで本研究では、イシククル湖とその集水域の物質収支を明らかにすべく、湖への流入河川の溶存物質について研究を行った。
2. 地域概要
 イシククル湖は面積6236 km2、貯水量1738 km3、水深668mの内陸湖である。塩分濃度は6‰と、周辺の塩湖よりも比較的低い。周辺は3000m以上の高山に囲まれており、集水域面積率も低い。
3. 研究方法
 イシククル湖において河川・地下水・湖を中心に現地水文観測を2012年~2014年夏季にかけて3回行った。調査地点は42地点で、河川31地点、湖9地点、地下水2地点を行った。気温、水温、EC、pHを現地観測し、持ち帰ったサンプルからTOCの測定、イオンクロマトグラフィーによる主要溶存成分分析を行った。
4. 結果と考察
 全般的に河川はCa-HCO3型であり、その中でも湖北と湖南では、溶存物質のイオン濃度が低い。一方、湖東と湖西ではイオン濃度が高く、流域特性の違いによる地質の影響の差異が認められた。世界各地の塩湖の水質組成と比較すると、イシククル湖の水質組成はNa-Mg-Cl-SO4型であり、比較的溶存している塩類のバランスが良い。これは、集水域河川や地下水を通じて、炭酸が集水域から多く供給されているためであると考えられる。また、湖南部では火成岩系の地質が多くみられ、SO42-の供給が多いのも原因の一つであると考えられる。Ca2+とHCO3-に関しては、CaCO3とCaSO4として析出していることが示唆された。これらの溶解度積を調べてみると、過飽和状態であった。天然水中であることを考慮すれば、妥当であると考えられるが、より一層の検証が必要である。

参考文献
A.S.Karmanchuk(2002):WaterChemistry and Ecology of Lake Issyk-Kul,NATO ScienceSeries,13,13-26