日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP42] 鉱物の物理化学

2015年5月26日(火) 14:15 〜 16:00 102A (1F)

コンビーナ:*興野 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球進化科学専攻)、大藤 弘明(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、座長:興野 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球進化科学専攻)

15:15 〜 15:30

[SMP42-05] NaClの熱圧力モデルへの自由体積理論の適用

*住田 達哉1 (1.産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

キーワード:状態方程式, 熱圧力, 自由体積理論, グリューナイゼンパラメータ, 熱力学, 塩化ナトリウム(B1相)

近年NaClやMgOなどの圧力標準物質や地球内部に存在する珪酸塩鉱物について状態方程式を構築する際、Mie-Gruneisenの式で表現することが多い。Mie-Gruneisenの式は、等温圧縮曲線の項と熱圧力の項からなり、等温圧縮曲線の項では、等温体積弾性率(KT)やその圧力微分値(K'T, K''T等)が、また熱圧力の項については、デバイ温度やGruneisenパラメータ(γ)とその体積微分値などがパラメータとなる。Slaterの式 [1] など古くから等温圧縮曲線とγには、密接な関係があることは知られている。Barton と Stacey [2] は、分子動力学計算と原子間ポテンシャルの考察から、自由体積理論 [3] を発展させた式(以下、Barton-Staceyの式)で、等温圧縮曲線からγを算出することを提案している。しかしながら、Barton-Staceyの式を積極的に利用して状態方程式を構築した例は未だ無い。Barton-Staceyの式の利用は、γの体積依存性について理論的裏付けをもたらすだけでなく、状態方程式全体の独立なパラメータ数を減らせる点でも大変有用である。
一方、NaCl(B1相)については、真性非調和を考慮した熱圧力モデル [4] が提出されており、γと比熱について、高精度に実験値が再現されている。この熱圧力モデルでは、絶対零度下のγとして、冪乗則が使われている。本研究では、冪乗則に代えてBarton-Staceyの式を適用することに取り組んだ。絶対零度下での等温圧縮曲線は、住田 [5] の方法で求め、Keane式 [6] によるフィッティングパラメータを用いた。Barton-Staceyの式では、等温圧縮曲線のパラメータの他に、隣り合う原子の角度方向の振動の寄与のパラメータ(f)が必要であるが、試行錯誤したところ、Vashchenko と Zubarev [3] のγ(f = 2 に相当)を使って f を推定すると良いことが判明した。本研究により、γと比熱の再現精度を損なうことなく、状態方程式の独立なパラメータを1つ減らすことに成功した。

References
[1] J.C. Slater: Introduction to Chemical Physics, McGraw-Hill, New York (1939)
[2] M.A. Barton, F.D. Stacey: Phys. Earth Planet. Int., 39, 167 (1985)
[3] V.Ya. Vashchenko, V.N. Zubarev: Sov. Phys. Solid State, 5, 653 (1963) 
[4] T. Sumita, A. Yoneda: Phys. Chem. Minerals, 41, 91 (2014) 
[5] 住田達哉:第55回高圧討論会講演要旨集 2A03(2014)
[6] A. Keane: Australian J. Phys., 7, 323 (1954)