日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT05] New phase of GPS/GNSS application as an integrated earth observation system

2015年5月27日(水) 14:15 〜 15:00 203 (2F)

コンビーナ:*小司 禎教(気象研究所気象衛星・観測システム研究部第2研究室)、津田 敏隆(京都大学生存圏研究所)、加藤 照之(東京大学地震研究所)、瀬古 弘(気象研究所)、佐藤 一敏(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)、座長:瀬古 弘(気象研究所)

14:45 〜 15:00

[MTT05-13] GPS/GNSS気象学 -概要と将来展望-

*小司 禎教1瀬古 弘1佐藤 一敏2加藤 照之3津田 敏隆4 (1.気象研究所、2.宇宙航空研究開発機構、3.東京大学地震研究所、4.京都大学生存圏研究所)

キーワード:GPS/GNSS気象学, 衛星測地学, 水蒸気

日本におけるGPS/GNSS気象学をレビューし、将来を展望する。
 水蒸気はGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)測位には誤差をもたらすノイズだが,天気予報にとっては精度向上をもたらす重要なシグナルである.1997-2001年度に取り組まれた科学技術庁科学技術振興調整費「GPS気象学:GPS水蒸気情報システムの構築と気象学・水文学への応用(以下「GPS気象学」と記す)」は,この「水蒸気」をキーワードに,測地研究者と気象研究者が,GPSという研究資源を介して学際協力を行い,相互の発展を図ることを基本概念として実施された.
「GPS気象学」プロジェクトは,世界に類を見ない稠密な国土地理院のGPS観測網,GEONET (GPS Earth Observation NETwork) から得られる水蒸気情報を天気予報の根幹である数値気象予報に活用すること,および数値予報データを用いた測位精度の向上という2つの目標を掲げ,測地研究者と気象研究者が参加する学際的なプロジェクトであった.1996年の実現可能性を探る予備研究 (Feasibility Study: FS) を経て,①GEONETから解析された可降水量(PWV)の精度検証,②数値予報へのデータ同化実験,③視線情報を用いたトモグラフィーによる3次元水蒸気構造の解析,④測位誤差をもたらす水蒸気の非一様性に関する研究等が取り組まれた.2000年,2001年にはつくば市周辺20km四方の領域に75箇所のGPS観測点を設置する世界初の稠密観測実験が取り組まれ,積乱雲の発達に伴う水蒸気の3次元構造とその変動を捕らえることに成功した.低軌道衛星に搭載した受信機に,大気を貫いて到達する電波の屈折を利用した掩蔽(Radio Occultation: RO)法により得られた気温の全球構造の解析から,重力波の鉛直伝播の様子が明瞭に捉えられた.さらに,富士山頂に設置した受信機を用いた掩蔽解析により,大気境界層内部の気温や水蒸気の構造解析に成功した.
プロジェクトの終了後も研究は進み,気象庁では2007年3月にドイツの掩蔽観測衛星CHAMPの観測した屈折率データの全球解析(Global Analysis: GA)への利用を開始した.さらに2009年10月には,GEONETから解析されたPWVのメソ解析(Mesoscale Analysis: MA)での利用を始めた.測地学の分野では高解像度数値気象モデルを用いたmm測位精度向上の研究が進展している.
2013年5月,国土地理院ではGEONET全点で,米国のGPSに加え,ロシアのGLONASS,JAXAの準天頂衛星(QZSS)の観測データの公開を開始した.加えて欧州のGALILEOや中国のCOMPASS等,現在はGPSからMulti-GNSS(Global Navigation Satellite System)の時代が始まっている.加えて,NTRIPストリーミングプロトコルを利用した観測や解析結果のリアルタイム配信により,GNSSによる地震,津波の観測,豪雨や突風の監視等,新たな研究が始まっている.反射波を用いた海面上の風の観測,積雪深,土壌水分の解析等新たな学問分野も創出されている.
この報告が,GPS/GNSS気象学の展望を議論する機会となれば幸いである.