日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL39] 地球年代学・同位体地球科学

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 A03 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)、座長:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)

10:00 〜 10:15

[SGL39-05] CHIME年代測定におけるエックス線の干渉補正モデルの影響評価

*加藤 丈典1Cho Deung-Lyong2Mi-Jung Jeen3 (1.名古屋大学年代測定総合研究センター、2.韓国地質資源研究院国土地質研究本部、3.釜山国立大学共同実験実習館)

キーワード:CHIME年代測定, 干渉補正, 電子プローブマイクロアナライザー(EPMA), 定量分析

CHIME年代測定は電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いることにより、ミクロンスケールの非破壊年代測定を行うことができる。CHIME年代測定では、ウラン、トリウム及び鉛の正確かつ高精度な定量分析を行う必要がある。EPMAでは加速した電子の衝突により発生する特性エックス線の強度から濃度を測定するが、元素ごとの特性エックス線強度を測定しなければならない。しかし、複数元素を含む試料では、ある元素から発生するエックス線が他の元素の特性エックス線と近接するエネルギーを持つことがある。このような場合、測定されたエックス線強度に対して干渉補正を行い目的とする元素の真のエックス線強度を見積もる必要がある。
 エックス線干渉補正では、(1)波形分離に基づく方法、(2)エックス線強度比を用いる方法[1]、及び(3)化学組成の見かけ上の比を用いる方法[2]がある。EPMAを用いたCHIME年代測定における干渉補正において、これらの手法を評価した。
波形分離に基づく方法は(1)ピークプロファイルを用いるため微量元素に適用するのが困難であること、及び、(2)基準になるプロファイルを作成した試料と年代測定の対象試料で妨害エックス線の波形形状が異なる場合に大きな誤差を生じさせるという問題がある。エックス線強度比を用いる方法は、微量元素でも容易に適用可能ではあるが、干渉補正の決定に用いた試料と年代測定の対象試料の化学組成がことなる場合、質量級数係数の違いなどの要因により不正確になる。化学組成の見かけ上の比を用いる方法は、干渉補正を決定する際に、化学組成既知の試料が必要となる。
名古屋大学のJCXA-733(日本電子)、韓国地質資源研究院のSX-50(カメカ)と釜山国立大学のSX-100(カメカ)を用いてUに対するThの干渉及びPbに対するThとYの干渉について評価した。その結果、Donovanら[2]の指摘通り、X線強度の段階で補正を行う方法は物質依存性が大きく、化学組成の見かけ上の比を用いる方法は物質依存性が小さいことが示された。したがって、正確なCHIME年代を得るためには、化学組成の見かけ上の比を用いることが望ましい。

[1] Åmli & Griffin, W.L. (1975) Amer. Mineral., 60, 599.
[2] Donovan, J.J., Snyder, D.A. & Rivers, M.L. (1993) Microbeam Anal., 2, 23.