日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月28日(木) 14:15 〜 16:00 304 (3F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:筒井 智樹(秋田大学国際資源学部)、木下 佐和子(東京大学地震研究所)

14:15 〜 14:30

[SVC45-16] UAV搭載型火山砕屑物採取装置の開発と評価

*谷島 諒丞1久利 美和2永谷 圭司1吉田 和哉1 (1.東北大学大学院 工学研究科、2.東北大学 災害科学国際研究所)

キーワード:サンプリング, サンプルリターン, 火山砕屑物, マルチコプタ

活火山が噴火すると,立入制限区域が設定されるため,有人での探査が困難になる.そこで,無人での火山探査が求められ,これまでに,日本やイタリアを中心に,無人火山探査ロボットの研究開発が行われてきた.その結果,画像情報やセンサによる環境情報は,取得できるようになりつつあるが,立入制限区域内に堆積した火山砕屑物を無人でサンプルリターンできるシステムはまだ実用化していない.そこで,本研究では,無人でのサンプルリターンを行う火山砕屑物採取システムの実現を目指し,そのシステムの中でも最も重要な,実際に地面に堆積している火山砕屑物の採取を行う火山砕屑物採取装置の開発と評価を行うことを目的とする.
本研究では,UAVからテザーで採取装置を吊るした構成の火山砕屑物採取システムを提案し,UAVで立入禁止区域内の目的地点までの移動を行い,目的地点で採取装置を着地させ,採取を行う設定とした.
火山砕屑物採取装置については,ローラ式を採用した.この方式は,回転する2本のローラによって地面を削ぎ,巻き込んで,火山砕屑物を採取するというものである.開発したローラ式火山噴出物採取装置は,縦180mm,横190mm,高さ130mm,重量830gと小型軽量で,モータでローラを回転させている.ローラの軸間距離は,巻き込んだサンプルの粒径に合わせ,平行リンクによって受動的に変化する構造となっており,また,ローラの表面には,溝をつけているため,様々な粒径のサンプルに対応できるようになっている.この装置では,最大で粒径25mmまでのサンプルをバケットに採取できる(ローラ間には最大で粒径65mmまで挟むことができる).
また,このローラ式火山砕屑物採取装置を用いたサンプリング試験を研究室内の模擬フィールドにて実施し,採取装置の性能を評価した.模擬フィールドには,粒径4mm以下と4mm以上の富士砂,および,両者を混合したものを用いた.評価については,採取できる重量,採取サンプルの粒径分布,採取できる深さの3つについて行った.試験結果より,この装置は,採取できる重量は粒径を問わず100g程度,採取できる深さは15mm程度であることがわかった.また,採取サンプルの粒径分布については,粗粒のみ,細粒のみの環境では,粒径分布がほぼ保持されるが,粗粒と細粒が混在する環境では,採取サンプルに占める粗粒の割合が高くなることがわかった.
さらに,火山砕屑物採取システム全体についてのフィールド試験を浅間山,桜島,伊豆大島で実施した.浅間山では,手動操縦でUAVを飛行させ,サンプルリターン可能であることを実証した.また,桜島,伊豆大島では, GPSを使った自動操縦でUAVを飛行させ,サンプルリターンを行った.特に,伊豆大島では,より実際の運用に近い,約300m離れた地点のサンプルリターンを実施し,採取に成功した.