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[AOS23-P02] 東シナ海におけるカタクチイワシの温暖化影響評価の試み
キーワード:海洋生態系モデル, 魚類成長-回遊モデル, カタクチイワシ, 地球温暖化
地球温暖化が東シナ海のカタクチイワシに与える影響を評価するために、海洋大循環モデルC-HOPE(Max-Planck-Institute Ocean Model)と海洋低次栄養段階生態系モデルNEMURO(North Pacific Ecosystem Model for Understanding Regional Oceanography)の拡張版であるeNEMUROを結合させた、CHOPE-eNEMUROを現在気候外力と将来気候外力を用いて駆動し、現在と将来の水温、流向・流速、餌料プランクトン場を得、その場を用いてカタクチイワシの成長-回遊モデル(CHOPE-eNEMURO.FISH)を積分した。カタクチイワシの成長は、生物エネルギーモデルを用いて、摂餌によるエネルギー獲得と代謝、排泄、排出、消化エネルギーなどによる消費の差分が成長に利用されると仮定した。NEMURO.FISH(NEMURO for Including Saury and Herring)は元来、サンマとニシンの成長を調べるために構築されたが、プランクトン捕食者であれば比較的容易に適応することができる。初期産卵場は、深度が1000 mよりも浅い海域で且つ水温が15.6~27.8℃の海域に形成されると仮定し、産卵後から1年間の計算を行った。現在気候下では、九州西岸域に加入するシラスの78%が九州南部に加入するが、将来気候下では南部への加入は0.5倍と減少するのに対し、北部への加入が2.7倍と増加し、南部加入率は40%に減少した。九州西岸に加入するシラスの総量は、現在気候下でも将来気候下でも変化しなかった。これは産卵場が北上したためと考えられる。また、加入するシラスの体長は南部では変化がないが、北部では将来気候下での方が体長が増加する結果となった。