18:15 〜 19:30
[MIS34-P12] 琵琶湖湖底堆積物に記録されたハインリッヒイベントと冬季モンスーン活動
キーワード:ハインリッヒイベント, 冬季モンスーン, 湖底堆積物, ボーリングコア, 気候変動
本州日本海沿岸地方は冬季の降雪量が多く、年間降水量も太平洋沿岸地域に次ぐ地方となっている。この冬季の降雪は春に雪解け水となり、田植え時の代掻き用の水として利用され、水力発電のエネルギー源ともなっている。冬季降雪量は日本海を渡る冬季モンスーンの活動と深い関係があり、降雪量の変動をモニターすることで冬季モンスーン活動をモニターできると考えた。そのため、この地域の中でも降雪量が多い伊吹山を流域に持つ琵琶湖をモニタリングステーションとして湖底堆積物の研究を実施した。琵琶湖の湖心域(水深63m)で採取された約18m長のピストンコア試料について、化学分析を実施し古環境変遷史を検討した。試料は泥質層を主とし、数枚のテフラ層を挟んでいる。テフラの年代及び放射性炭素年代を基に年代モデルを作成し、コアの深度を年代値に変換した。その結果、全炭素濃度や生物源シリカ濃度は約6千年の周期性を持っていることが明らかになった。そのうち全炭素濃度は全炭素/全窒素比とともに急激な寒冷期であるハインリッヒイベント時に相対的に高い値となった。カルシウム濃度は約7千年の周期性を示し、ハインリッヒイベント時に高い値を示す一方、リン濃度は約7千年の周期性を示すものの同イベント時に低い値を示した。これらの濃度変化のうちリン濃度は前回紹介した愛知川河口沖ボーリング試料の含砂率を元にした湖水面変動曲線とよい対応を示し、湖水面高度上昇期に低濃度を示していることが明らかになった。従来、マンガンやリンの堆積物中の濃度は水深と相関するとされてきたが、これまでとは逆の結果が得られた。
以上の結果から以下のような堆積モデルを考えている。急激な寒冷期を中心に寒冷期には降雪量は増加したものと考えられる。その結果、伊吹山を構成する石灰岩からカルシウム成分に富む砕屑粒子が春の雪解け水とともに湖に供給される。一方、有機物の生産量は低下し、湖への流入量も低下する。また、陸域での化学的風化も弱くなり、リンやマンガンの移動量は減少傾向にあった。つまり、カルシウムは降雪量と正の相関を示し、リンは降雪量と負の相関を示すことになる。これらの堆積様式が急激な寒冷期と一致することから、その原因は主として急激な寒冷期に冬季モンスーン活動が活発化し、風下側の日本列島日本海側で降雪量が増加し、春に大量の雪解け水を供給し、湖水面も上昇したと結論した。
以上の結果から以下のような堆積モデルを考えている。急激な寒冷期を中心に寒冷期には降雪量は増加したものと考えられる。その結果、伊吹山を構成する石灰岩からカルシウム成分に富む砕屑粒子が春の雪解け水とともに湖に供給される。一方、有機物の生産量は低下し、湖への流入量も低下する。また、陸域での化学的風化も弱くなり、リンやマンガンの移動量は減少傾向にあった。つまり、カルシウムは降雪量と正の相関を示し、リンは降雪量と負の相関を示すことになる。これらの堆積様式が急激な寒冷期と一致することから、その原因は主として急激な寒冷期に冬季モンスーン活動が活発化し、風下側の日本列島日本海側で降雪量が増加し、春に大量の雪解け水を供給し、湖水面も上昇したと結論した。