18:15 〜 19:30
[SVC45-P31] 阿蘇火山における連続微動の発生位置推定
キーワード:火山性微動, 阿蘇火山
火山性微動は火山性流体の移動やその相互作用によって励起される振動であり、火山活動をモニタリングする上で重要な現象のひとつである。阿蘇火山では1900年代初頭から観測による火山性微動の研究が主として行われてきており(例えばSassa, 1935)、数種類の火山性微動が発生していることが知られている。例えば、3-10 Hzの周波数帯が卓越する連続微動は、中岳第一火口下600 m以浅で発生しており、火山性流体が地下水に侵入することによって励起されていると考えられている(Takagi et al., 2006; 2009)。一方、連続微動の振幅増大は火山活動の活発化と対応性があることから、火道の拡大過程によってこの微動が発生するという考えもある(須藤, 2012)。しかし、いずれの場合においても連続微動の発生位置や発生機構の詳細は明らかになっていない。
阿蘇火山中岳では2014年1月7日に火孔の開口が、1月13日には小規模噴火の発生が確認された(気象庁, 2014)。京都大学火山研究センターの地震記録には、これらの火山活動に前駆して、一ヶ月以上前から連続微動の振幅増減があったことが認められる。第一火口から南に約1 kmの位置にある観測点(砂千里)の地震記録(鉛直成分; 5-10 Hz)では、この振幅変化は2013年11月から12月中旬にかけての緩やかな振幅の増大で始まった(0.006 μm/s/day)。その後2週間程度の急激な振幅増大を経て(0.16 μm/s/day)、12月30日から2014年1月2日にかけて11月初旬の振幅レベルにまで急減した(-0.25 μm/s/day)。さらにその後も再び同様の振幅増減が10日間にわたって繰り返された。
本研究では、上記の振幅変化が確認された期間に着目して連続微動の発生位置を推定した。そして、推定された連続微動発生位置の時空間変化と火口表面現象の推移から、火口浅部における火道分布と微動発生過程について考察した。
連続微動発生位置は、京都大学火山研究センターの7観測点の地震記録(鉛直成分; 5-10 Hz)を用いて推定した。ここでは振幅比空間分布(砂千里を基準)を最も説明できる点を微動発生位置とみなし、火口を含む約1,500 m×1,500 m×1,200 mの領域(グリッド間隔は25 m)において、S波の等方放射を仮定したグリッドサーチを行った(Vs = 1.12 km/s; Q = 204)。解析は、4観測点以上の地震記録があり、これらの観測点が火口からの方位・距離について偏りなく配置されている期間を対象とした(2013年12月3日-2014年1月14日)。上記期間における連続微動の発生位置は、火口下数十 mの深さ(振幅が緩やかに増大した期間; ステージ1)、および、火口中央部の地表付近(振幅が急増した期間; ステージ2)にそれぞれ推定された。また、12月と同様の振幅増減の見られた1月(ステージ3)では、火口下の深さ数百 mから火口底表面付近の範囲であった。
第一火口下には火山性流体の通路としてクラック状の火道が存在していると考えられており、その上端部は火口から300 mの深さにある(Yamamoto et al., 1999)。今回推定された微動発生位置は、このクラック状火道と火口とをつなぐように分布しており、今まで不鮮明であった火口直下の火道の一部が捉えられたものと思われる。この火道を通って火口へ流体が常に流入していたが(Terada et al., 2012)、2013年12月には流入フラックスが平時以上の大きさになったために、火道拡大・火孔開口を必要としたと考えられる。第一火口直下の領域には、上部にキャップロック、その下部に熱水溜まりがあり(Kanda et al., 2008)、火口底表面付近に得られた微動源はキャップロック領域の破砕現象を示している可能性がある。また、1月7日に火口底中央部に新たな火孔が確認されたことは、この時までに火道の拡大が地表まで到達していたことを示唆する。1月13日の小規模噴火は、上記のような火山性流体の流入過程の結果生じたものとして説明される。
阿蘇火山中岳では2014年1月7日に火孔の開口が、1月13日には小規模噴火の発生が確認された(気象庁, 2014)。京都大学火山研究センターの地震記録には、これらの火山活動に前駆して、一ヶ月以上前から連続微動の振幅増減があったことが認められる。第一火口から南に約1 kmの位置にある観測点(砂千里)の地震記録(鉛直成分; 5-10 Hz)では、この振幅変化は2013年11月から12月中旬にかけての緩やかな振幅の増大で始まった(0.006 μm/s/day)。その後2週間程度の急激な振幅増大を経て(0.16 μm/s/day)、12月30日から2014年1月2日にかけて11月初旬の振幅レベルにまで急減した(-0.25 μm/s/day)。さらにその後も再び同様の振幅増減が10日間にわたって繰り返された。
本研究では、上記の振幅変化が確認された期間に着目して連続微動の発生位置を推定した。そして、推定された連続微動発生位置の時空間変化と火口表面現象の推移から、火口浅部における火道分布と微動発生過程について考察した。
連続微動発生位置は、京都大学火山研究センターの7観測点の地震記録(鉛直成分; 5-10 Hz)を用いて推定した。ここでは振幅比空間分布(砂千里を基準)を最も説明できる点を微動発生位置とみなし、火口を含む約1,500 m×1,500 m×1,200 mの領域(グリッド間隔は25 m)において、S波の等方放射を仮定したグリッドサーチを行った(Vs = 1.12 km/s; Q = 204)。解析は、4観測点以上の地震記録があり、これらの観測点が火口からの方位・距離について偏りなく配置されている期間を対象とした(2013年12月3日-2014年1月14日)。上記期間における連続微動の発生位置は、火口下数十 mの深さ(振幅が緩やかに増大した期間; ステージ1)、および、火口中央部の地表付近(振幅が急増した期間; ステージ2)にそれぞれ推定された。また、12月と同様の振幅増減の見られた1月(ステージ3)では、火口下の深さ数百 mから火口底表面付近の範囲であった。
第一火口下には火山性流体の通路としてクラック状の火道が存在していると考えられており、その上端部は火口から300 mの深さにある(Yamamoto et al., 1999)。今回推定された微動発生位置は、このクラック状火道と火口とをつなぐように分布しており、今まで不鮮明であった火口直下の火道の一部が捉えられたものと思われる。この火道を通って火口へ流体が常に流入していたが(Terada et al., 2012)、2013年12月には流入フラックスが平時以上の大きさになったために、火道拡大・火孔開口を必要としたと考えられる。第一火口直下の領域には、上部にキャップロック、その下部に熱水溜まりがあり(Kanda et al., 2008)、火口底表面付近に得られた微動源はキャップロック領域の破砕現象を示している可能性がある。また、1月7日に火口底中央部に新たな火孔が確認されたことは、この時までに火道の拡大が地表まで到達していたことを示唆する。1月13日の小規模噴火は、上記のような火山性流体の流入過程の結果生じたものとして説明される。