日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS03] Understanding extremes: high-resolution models, dense observations and the emergent role of big data

2015年5月26日(火) 11:00 〜 12:45 301A (3F)

コンビーナ:*Eugenio Realini(Geomatics Research & Development Srl)、Saji Hameed(The University of Aizu)、津田 敏隆(京都大学生存圏研究所)、座長:Eugenio Realini(Geomatics Research & Development Srl)、Saji Hameed(The University of Aizu)

11:15 〜 11:30

[AAS03-02] 降雨域の誤差相関のスケールを考慮した局所化半径を用いる同化実験

*大井川 正憲1津田 敏隆1瀬古 弘2小司 禎教2佐藤 一敏3Eugenio Realini4 (1.京都大学生存圏研究所、2.気象庁気象研究所、3.宇宙航空研究開発機構、4.Geomatics Research & Development (GReD), Italy)

キーワード:GPS可降水量, データ同化, LETKF, 局所化

アサンサンブルカルマンフィルタでは、少ないアンサンブルメンバー数に起因するサンプリングエラーに対処するため局所化を行い遠方の格子点で計算される不自然な誤差相関を除去している。この際、現象が持つ誤差相関の水平スケールを考慮して局所化の半径を決める必要がある。例えば、青梨 (2011)では、物理量の誤差相関の水平スケールが非降水域よりも降水域で小さくなることが報告されており、2スケールでのスペクトル局所化の有用性が調べられている。しかし、観測局所化を行うLETKF(Local Transform Ensemble Kalman Filter)を用いた研究で降水域内の物理量に対して小さい局所化半径を用いる効果について調べた研究はない。本研究では、LETKFを用いて降水域内の物理量に対して小さい局所化半径を適用し、降水量のシミュレーション結果に与える影響について調べる事を目的とする。
気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)(Saito et al., 2007)を使用し、同化システムにNHM-LETKFのネストシステム(Seko et al., 2013)を使用した。対象とした事例は2012年8月13日の夜から2012年8月14日の朝に京都府宇治市の大雨をもたらした線状降水帯の事例である。13日21LTから親LETKF(水平格子15 km)から子LETKF(水平格子1.875 km)を行い1時間のアンサンブルシミュレーションと同化のサイクルを8回行った。降水帯周辺のGNSS連続観測システム(GEONET)観測点10点と宇治市付近に独自に構築した稠密GNSS観測網(Sato et al., 2013)のPWVデータをSeko et al., (2011)の方法で相対湿度のプロファイルに変換して子LETKFでの同化に使用した。この他に、気象庁の現業で使用されている地上と高層観測データを親及び子LETKFに同化している。気象庁全国合成レーダーを使用して強雨域(>10 mm/h)の判別を行った。解析点が強雨域の場合は局所化半径を1格子分として強雨域のGNSS観測点のデータのみ同化し、それ以外は、局所化半径を5格子分として強雨域にはないGNSS観測点のデータを同化した。
レーダーの1時間積算雨量値をモデルの格子点位置に内挿し、子LETKFで計算した1時間雨量の第一推定値のRMSEを8サイクルについて調べた。その結果、局所化半径を強雨域で小さくした事により、8サイクル中5サイクルで誤差の改善がみられ、RMSEが悪化したのは1サイクルのみであった。実況で降水強度が最も強かった14日05 LTまでの1時間雨量では、約10%の誤差の改善が見られており、強降水域の位置等に影響していた事が分かった。