14:15 〜 14:30
[SCG60-08] 海洋スラブ不規則地形による条痕作用および沈み込み帯の分類
キーワード:条痕, 沈み込み帯, 海洋スラブ, 凸地形
海山(または海山列)やトランスフォーム断層化石の断裂帯(F.Z.)等のような短波長の不規則地形を伴った海洋リソスフェアの海溝系への接近と沈み込みは,沈み込み帯での巨大地震の発生様式に影響する可能性がある(例えば,江口,1979,1996;Hilde, 1983; Suzan, 2010)。ここで言う「条痕」とは,プレート境界面での「摩擦抵抗」の「強化」をもたらす,海洋リソスフェア上層部の不規則地形(特に,凸地形)によるせん断変形等,および条痕作用の結果としての様々な規模の地震活動を指す。この凸地形の原因は海山や断裂帯だけでない。アウターライズ付近からの海洋リソスフェア折れ曲がりによるリソスフェア表層部の開口割れ目形成による,海溝系とほぼ平行な凹凸地形も条痕作用に関与する(例えば,Hilde, 1983)。
そのような海洋リソスフェア表層構造の短波長異常によるプレート境界面での条痕作用に着目して,「条痕テクトニクス」(streak tectonics,またはabrasion tectonics)なる表現が提案されている(例えば,江口,1996)。沈み込み帯での条痕作用と大地震の発生様式の関係については,類似研究が多い(例えば,Ranero他, 2008)。
これらの条痕作用のため,比較的高温下では,焼き付き状態を含めた弾塑性モデルも可能かもしれないが,前弧先端付近は相対的に低温で,上盤リソスフェアの非弾性的な並進と回転を伴うブロック形成などの大規模変形が進行する。
また,海溝軸から前弧域にかけては,条痕作用により海洋リソスフェア最上部の未固結/固結堆積層と海洋地殻が沈み込み進行方向(?プレート間相対運動方向)での「後ずさり変形」が認められよう。
ところで,プレート境界面では,沈み込む側の海洋プレート上層部に含まれていた液体(水など)の一部がプレート境界面での摩擦抵抗を「弱化」する(例えば,von Huene他, 2004)。プレート境界面とその近傍域での液体は,密度差による上下方向への移動のみならず,その通路や溜まり箇所での周辺岩石との化学反応を経た力学的強度の変化を含め,プレート境界面での摩擦抵抗を低減する場合が多いだろう。
何れにしても,プレート境界面での条痕と液体は,それぞれ摩擦抵抗の強化と弱化に関与するので,互いに相反する機能を果たす。しかしながら,少なくとも沈み込み帯での条痕と流体の作用に関する物理学の詳細は未解明である(例えば,Suzan, 2010)。
付加帯のみに着目した沈み込み帯分類(例えば,Bilek, 2010)を参考にすると,条痕作用が海溝セグメント全体で進行する沈み込み帯,つまり長波長の条痕作用のある沈み込み帯では付加体は浸食を受ける,あるいは付加帯が存在しないような「浸食型沈み込み帯」(erosional subduction zone),そして短波長の凸地形に関係した条痕作用があろうとも海溝セグメント全体の長波長成分としては付加帯が成長するような「付加帯成長型沈み込み帯」(accreting subduction zone)の二種類が対極となる。しかしながら,この付加帯重点主義の沈み込み帯分類モデルは,沈み込み帯の幾つかの主要な特徴を説明できるとは限らない。
今回は,2011年東北地方太平洋沖地震などの沈み込み帯巨大地震の前後におけるプレート境界面変形様式にも着目して,条痕作用を再考察する。また,付加帯の有無とは別の沈み込み帯パラメータに着目した沈み込み帯分類学も再検討する。
そのような海洋リソスフェア表層構造の短波長異常によるプレート境界面での条痕作用に着目して,「条痕テクトニクス」(streak tectonics,またはabrasion tectonics)なる表現が提案されている(例えば,江口,1996)。沈み込み帯での条痕作用と大地震の発生様式の関係については,類似研究が多い(例えば,Ranero他, 2008)。
これらの条痕作用のため,比較的高温下では,焼き付き状態を含めた弾塑性モデルも可能かもしれないが,前弧先端付近は相対的に低温で,上盤リソスフェアの非弾性的な並進と回転を伴うブロック形成などの大規模変形が進行する。
また,海溝軸から前弧域にかけては,条痕作用により海洋リソスフェア最上部の未固結/固結堆積層と海洋地殻が沈み込み進行方向(?プレート間相対運動方向)での「後ずさり変形」が認められよう。
ところで,プレート境界面では,沈み込む側の海洋プレート上層部に含まれていた液体(水など)の一部がプレート境界面での摩擦抵抗を「弱化」する(例えば,von Huene他, 2004)。プレート境界面とその近傍域での液体は,密度差による上下方向への移動のみならず,その通路や溜まり箇所での周辺岩石との化学反応を経た力学的強度の変化を含め,プレート境界面での摩擦抵抗を低減する場合が多いだろう。
何れにしても,プレート境界面での条痕と液体は,それぞれ摩擦抵抗の強化と弱化に関与するので,互いに相反する機能を果たす。しかしながら,少なくとも沈み込み帯での条痕と流体の作用に関する物理学の詳細は未解明である(例えば,Suzan, 2010)。
付加帯のみに着目した沈み込み帯分類(例えば,Bilek, 2010)を参考にすると,条痕作用が海溝セグメント全体で進行する沈み込み帯,つまり長波長の条痕作用のある沈み込み帯では付加体は浸食を受ける,あるいは付加帯が存在しないような「浸食型沈み込み帯」(erosional subduction zone),そして短波長の凸地形に関係した条痕作用があろうとも海溝セグメント全体の長波長成分としては付加帯が成長するような「付加帯成長型沈み込み帯」(accreting subduction zone)の二種類が対極となる。しかしながら,この付加帯重点主義の沈み込み帯分類モデルは,沈み込み帯の幾つかの主要な特徴を説明できるとは限らない。
今回は,2011年東北地方太平洋沖地震などの沈み込み帯巨大地震の前後におけるプレート境界面変形様式にも着目して,条痕作用を再考察する。また,付加帯の有無とは別の沈み込み帯パラメータに着目した沈み込み帯分類学も再検討する。