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[PPS23-21] 月形成初期における全球膨張 : 線状重力異常の地形的特徴からの制約
キーワード:線状重力異常, 全球膨張, 伸張応力, 地形, 年代学
アポロが持ち帰った岩石試料の分析に基づくと、月はマグマオーシャンの状態から始まり、その後マントル再溶融による火成活動があったと考えられている。熱史の数値計算によると、マントル再溶融による熱膨張が原因で、マグマオーシャン固化から数億年で月半径の増加がピークになるという報告がある[Solomon and Head, 1979]。しかし、月の表面地形はその後の天体衝突によって大きく変化しているため、全球膨張の地形的な痕跡は見つかっておらず、全球膨張のタイミングや程度は観測的に制約されていない。一方で、Andrew-Hanna et al. [2013] はGRAILの高解像度重力データの解析により大規模な線状重力異常 (以下、LGA) を発見した。彼らはその成因が月歴史初期の全球膨張によるマグマの貫入であると推定している。
我々はLGAに着目して、月初期の全球膨張とマグマ貫入説の検証を行ってきた。20箇所のLGAを研究対象として、LGA周辺の地形学的解析に基づいて、大多数のLGA(20ヶ所中18ヶ所)は谷のような構造を示すことを明らかにした[澤田ほか、 2014]。このことからLGA上の地形は月形成初期の全球膨張に起因する伸張場で形成されたと考えられる。
さらに全球膨張のタイミングを制約するために、惑星の表面年代を決定する方法として有効なクレータ年代学を用いて、LGAの形成年代を推定した。解析に用いた地形データは約0.001°間隔のLOLAのグリッドデータ[http://imbrium.mit.edu/LOLA.html LOLA_GDR (LRO-L-LOLA-4-GDR-V1.0)]である。LGA上から垂直方向50km以内におけるクレータ数密度にNeukum [1983]の年代モデルを適用し、表面年代を決定した。その結果、LGA上の年代は4.1 Gaにピークを持ち、4.3~3.9 Gaの範囲内にあることが明らかになった。この年代は隕石試料やアポロが持ち帰った最古の玄武岩試料の絶対年代 (4.3~4.1 Ga) [e.g., Terada et al., 2007]とおおよそ一致する。
以上の結果に基づき月半径変化量の時間履歴の復元を試みた。その際、全球膨張によって形成された伸張地形はLGAとして全て見つかっていると仮定した。全球膨張によって形成されたLGA上の地形を二つの正断層から成る簡易的な谷構造とし、断層傾斜角を変化させ、月半径変化量を計算した。その結果、見積もられる月半径変化量は最大2.5km以下になることが明らかになり、月熱史モデルによる推定値 [Zhang et al., 2014] と矛盾しないことが分かった。
我々はLGAに着目して、月初期の全球膨張とマグマ貫入説の検証を行ってきた。20箇所のLGAを研究対象として、LGA周辺の地形学的解析に基づいて、大多数のLGA(20ヶ所中18ヶ所)は谷のような構造を示すことを明らかにした[澤田ほか、 2014]。このことからLGA上の地形は月形成初期の全球膨張に起因する伸張場で形成されたと考えられる。
さらに全球膨張のタイミングを制約するために、惑星の表面年代を決定する方法として有効なクレータ年代学を用いて、LGAの形成年代を推定した。解析に用いた地形データは約0.001°間隔のLOLAのグリッドデータ[http://imbrium.mit.edu/LOLA.html LOLA_GDR (LRO-L-LOLA-4-GDR-V1.0)]である。LGA上から垂直方向50km以内におけるクレータ数密度にNeukum [1983]の年代モデルを適用し、表面年代を決定した。その結果、LGA上の年代は4.1 Gaにピークを持ち、4.3~3.9 Gaの範囲内にあることが明らかになった。この年代は隕石試料やアポロが持ち帰った最古の玄武岩試料の絶対年代 (4.3~4.1 Ga) [e.g., Terada et al., 2007]とおおよそ一致する。
以上の結果に基づき月半径変化量の時間履歴の復元を試みた。その際、全球膨張によって形成された伸張地形はLGAとして全て見つかっていると仮定した。全球膨張によって形成されたLGA上の地形を二つの正断層から成る簡易的な谷構造とし、断層傾斜角を変化させ、月半径変化量を計算した。その結果、見積もられる月半径変化量は最大2.5km以下になることが明らかになり、月熱史モデルによる推定値 [Zhang et al., 2014] と矛盾しないことが分かった。