日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS25] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 101A (1F)

コンビーナ:*千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)、座長:八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、小森 次郎(帝京平成大学)

10:00 〜 10:15

[HDS25-05] 雪上を長距離移動したランドスライド:富山県片貝川上流大明神沢崩壊

*永田 秀尚1日野 康久2柏木 健司3 (1.(有)風水土、2.(株)環境総合テクノス、3.富山大・理)

キーワード:ランドスライド, 長距離移動, 雪, 富山

2012年春,富山県魚津市片貝川上流,大明神沢の稜線付近でランドスライドが発生した.雪上を長距離移動したランドスライドの一例として以下に記載する.
このランドスライドが確認されたのは2012年5月21日であるが,正確な発生日時は不明であるため,発生の誘因もよくわからない.ただし,確認前1ヶ月の期間中に大きな地震は観測されていない.4月下旬から5月上旬にかけて気温の高い日が続き,5月4日や5月6日には降水も観測されていることから,この時期の,融雪をともなう降雨に起因する現象であった可能性がある.登山道もない非常に急峻な山中であるため,発生域の調査はおこなわれていないが,撮影された写真によれば,大明神沢源頭部の尾根直下(標高1,970m付近)を発生域とする岩盤崩壊で,その規模は幅65m,長さ160m程度(いずれも概測),推定される体積は100,000m3程度である.発生域の地質はジュラ紀の船津花崗岩類に属する花崗岩ないし花崗閃緑岩である.
大明神沢源頭部の平均傾斜は35°あり,崩壊土砂は高速で積雪上を流下した.2012年6月,10月に実施した標高1,250mまでの調査では,雪渓の上に0.2~0.5mの厚さで薄く岩屑が広がっている状況であった.この状況は標高990mの末端まで変わりない.末端は砂防ダムによって停止させられているが,砂防ダムを乗り越えた土砂量はわずかであることから,自然の状態であっても停止位置はあまり変わりないであろう.砂防ダムの上流にある谷の大きな屈曲部が移動速度の減少に大きな役割を果たしたものと考えられる.移動距離は水平に約2.4km,この間の標高差は980mであるから,等価摩擦係数(H/L)は0.41となる.
雪上を滑走するランドスライドには,土石流,雪と岩屑の混合物のスライド,落石といったさまざまな運動があり,それぞれに構成物質と流動特性が異なるものと思われる.