日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM07] Space Weather, Space Climate, and VarSITI

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 302 (3F)

コンビーナ:*片岡 龍峰(国立極地研究所)、海老原 祐輔(京都大学生存圏研究所)、三好 由純(名古屋大学太陽地球環境研究所)、清水 敏文(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、浅井 歩(京都大学宇宙総合学研究ユニット)、陣 英克(情報通信研究機構)、佐藤 達彦(日本原子力研究開発機構)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、宮原 ひろ子(武蔵野美術大学造形学部)、中村 卓司(国立極地研究所)、塩川 和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)、伊藤 公紀(横浜国立大学大学院工学研究院)、座長:塩川 和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)

09:00 〜 09:15

[PEM07-32] 巨大黒点12192はなぜコロナ質量放出を起こさなかったのか?

*柴田 一成1石井 貴子1河村 聡人1 (1.京都大学理学研究科附属天文台)

キーワード:フレア, コロナ質量放出, 黒点, 磁場, 電磁流体力学, 宇宙天気予報

2014年10月下旬に出現した黒点12192の面積は A=2750 MSH = Millionth Solar
Hemisphere に達した。これは1990年11月の巨大黒点6368(面積A=3080 MSH)以来の
24年ぶりの巨大黒点であり、大フレアや大磁気嵐を起こす可能性があるとして、世界的な注目を集めた。実際、東のリムに見え始めた10月17日から西のリムに消えた10月30日までの2週間の間に、Xクラスフレアを6回引き起こした。これは今サイクルにおいて、一活動領域当たりのXクラスフレアの数では最多であった。ところが、一見不思議なことに、これらの6回のXクラスフレアは、一つもコロナ質量放出(CME)を引き起こさず、その結果、太陽風はきわめて静かであり、磁気嵐は全く発生しなかった。
京大飛騨天文台では、この巨大黒点12192をSMART望遠鏡とドームレス太陽望遠鏡を用いて、詳細に観測し、6回のうちの2回のXクラスフレアの観測に成功した(10月19日UT5時3分(ピーク時)X1.1, 10月24日UT21時40分(ピーク時)X3.1)。

本講演では、飛騨天文台における上記の黒点とフレアの観測の概要を紹介するとともに、なぜこの巨大黒点のXクラスフレアはCMEを引き起こさなかったか、過去のCMEフレアと比較することにより統計的な観点から考察する。得られた結論を一言でまとめると、「同じX線強度のフレアに対しては、黒点が巨大になればなるほど、
CMEは発生しにくくなる」というものである。