日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT31] 環境トレーサビリティー手法の新展開

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、陀安 一郎(京都大学生態学研究センター)

18:15 〜 19:30

[HTT31-P14] 安定同位体を利用した裏磐梯地域の地下水流動の推定

*藪崎 志穂1 (1.福島大学 共生システム理工学類)

キーワード:裏磐梯, 地下水流動, 安定同位体

福島県会津地域に位置する磐梯山の北部斜面(裏磐梯地域)の地下水流動を把握するため,2014年6~8月にかけて,湧水,地下水,湖沼水,渓流水等の調査,採水を実施し,一般水質,安定同位体の分析を実施した。現地調査(EC,pH,水温,ORP)や水質分析の結果から,磐梯山北側斜面の湧水,湖沼水等では以下の特徴を把握することができた。1)ECとpHには負の相関が認められる。2)銅沼やその周辺の湖沼・湧水のように,ECが高く,pHが低い地点では火山ガスの影響を受けていると考えられる。3)五色沼湖沼群はEC,pHなどの違いにより,幾つかのグループに分類することができる。4)弁天沼に流入している湧水には,標高の高い地点で涵養され,火山ガスの影響を受けたと考えられる水が存在している。5)銅沼とその周辺の湧水や湖沼の水質組成はCa-SO4型を示し,溶存成分量は非常に多い。6)五色沼周辺の湖沼群の多くはCa-(Cl+SO4)型を示しており,ECやpHで示されたような区分は,本調査の水質組成の結果においては明瞭には認められなかった。7)銅沼のδ18O値は-10.9‰で,銅沼の下流側に位置する湧水では-11.2‰であった。五色沼周辺に位置する弁天沼に流入する湧出する湧水のδ18O値は-10.8‰を示している。このような同位体や水質の結果から,銅沼周辺で涵養された水が湧水として湧出していることが考えられる。8)銅沼と五色沼の中間付近に設置された地下水観測井で複数回採取した地下水のδ18O値は-11.2‰でほぼ一定しており,磐梯山北側の地下水は銅沼から下流側の五色沼方面にかけて同一の地下水流動の存在が示唆された。
今後,湧水や湖沼水の3Hや,観測井のCFCs等の分析を行うことにより,地下水流動についてより詳細に把握することができると期待される。