日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] ジオパーク

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、有馬 貴之(帝京大学 経済学部 観光経営学科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会)、藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)

18:15 〜 19:30

[MIS23-P02] 阿蘇中岳における2014年の噴火と阿蘇ジオパークの対応―1988年~1995年活動期との比較―

*永田 紘樹1池辺 伸一郎2渡辺 一徳1 (1.阿蘇ジオパーク推進協議会、2.阿蘇火山博物館)

キーワード:ジオパーク, 火山灰, 阿蘇中岳, 灰噴火, ストロンボリ式噴火, 防災

阿蘇ジオパークは,平成26年9月に世界ジオパークに認定され,地域地質の保全や情報を一般にわかりやすく提供することがますます求められている.このようななか,平成26年11月25日から平成27年2月現在まで噴火を継続している阿蘇中岳の活動状況を把握し,地域住民や国内外の観光客に正確な情報を提供することは,地域防災や風評被害の対策として重要である.
そこで,阿蘇ジオパークでは,拠点施設である阿蘇火山博物館を中心として,火口縁に設置されたカメラによる映像観察や火山灰の採集を定期的に行うことによって,現在の活動状況を把握するとともに,過去に蓄積されたデータとの比較を行った.
【活動の推移】
阿蘇中岳の噴火は,活動初期に湯だまりの減少や赤熱現象がみられ,活発になると灰噴火,最盛期にはストロンボリ式噴火やマグマ水蒸気爆発なども発生し,徐々に収束した後,静穏期に再度湯だまりが形成されるという規則性があるとされる(小野・他,1995など).1988年~1995年活動期には,灰噴火を始めた後,スコリアを噴出するようなストロンボリ式噴火を行うまでに約4か月かかっている.しかし,2014年の噴火は,11月25日に噴火を始めた後,11月26日には火口縁にスコリアが報告されており(産総研,2014),灰噴火とストロンボリ式噴火がほぼ同時に始まったことが特徴的である.また,1988年~1995年活動期においては,最盛期に至る過程で火孔の変遷や拡大,最盛期にはストロンボリ式噴火の他にマグマ水蒸気爆発が発生しているが,2015年2月現在で,これらの現象は確認されていない.
【火口カメラの映像】
2014年の噴火では12月10日にストロンボリ式噴火が映像として記録された.スコリアを噴出する間隔は約1~3秒であり,長い時で10秒以上も噴出し続けることがあった.このように長い間マグマを連続して噴出するような様子は,前回の活動期においては確認できていない.また,火口底中央部の141火孔(気象庁による)の活動が活発になったあとでも,第1火口南側火口壁の噴気や赤熱現象が衰えを見せないことも特徴的である.
【火山灰の推移】
1988年~1995年活動期には,活動初期にスコリア型不透明粒子が多く,ストロンボリ式噴火に伴いスコリア型褐色透明ガラス片が急増し,減衰期には多面体型褐色透明ガラス片が多く含まれることが報告された(池辺・他,2008).2014年の噴火では11月27日に採取したものはスコリア型不透明粒子が多く含まれていたが,12月9日に採取したものにスコリア型褐色透明ガラス片が多く含まれるようになった.2015年1月10日や13日に採取した火山灰には,スコリア型不透明粒子の表面が滑らかでエナメル質のような光沢を持つものがわずかながら含まれている.これは,これまで中岳の灰噴火で報告された脱ガラス化した火山灰(小野・他,1995)の可能性あり,今後検討が必要である.
【観察結果の活用】
阿蘇ジオパークでは,噴火の2週間前から関係各機関と連携をとり今回の噴火に備えてきた.特に,多くの灰が降ることが予想されたため,噴火後の3日にはこれまでの知見を集めた一般向けの火山灰啓発チラシを各方面に公開した.また,上記の観察結果の一部は,2014年12月15日と2015年2月12日に地域住民や行政職員に対して報告され,2014年噴火の噴出物の展示も行った.その際,回収したアンケートの結果では,灰や噴火に対する現状の理解に役立ったという回答が多かった.阿蘇では,1988年?1995年活動期を経験していない移住してきた住民も多いことから,今後も過去の履歴と現状の比較を行い,正しい情報を地域に発信する活動を継続して行う必要がある.