11:45 〜 12:00
[HQR23-07] 日本の低湿地遺跡から発掘された木材のC-14年代と年輪年代の比較
キーワード:放射性炭素年代, 年輪年代, 暦年代, クロスデーティング, 18O/16O変動パターン編年, 14Cウイグルマッチング
遺跡から多数の木材,木柱が出土した場合,それらの材の連続した全年輪試料の採取が許されれば,これらの木材の年輪幅解析によって正確な年輪年代の決定される可能性が高い.これが年輪マスターカーブと一致せず年輪年代決定が困難な場合でも,木材間の相対的な生存年の対比は可能であろう.例えば,青田遺跡から出土した木柱では,80本あまりの木柱の年輪解析が行われ,クロスデーティングの結果,年代の古い47本と若い33本の2つのグループに分かれることが明らかにされた(木村ほか2004).2011年頃は,まだ暦年代が決まっておらず,年輪解析から両グループの年代差が91年と暫定的に与えられていた.この間,幾つかの木柱について14Cウイグルマッチングによる高精度年代推定が試みられた.しかし,これらの木柱の暦年代が紀元前500年ころにあたっており,この年代領域,すなわち,紀元前750年から400年の約350年間は暦年代較正曲線IntCalの14C年代の変化が乏しくほぼ平坦な変動を示す時期であることから,14Cウイグルマッチング解析が有効に機能しなかった(中村・木村2004).その後,中塚ほか(2013)の努力により樹木年輪の安定酸素同位体比(δ18O)の変動パターンが日本産木材の年輪のマッチングに利用できることが明らかとされ,δ18Oによる年輪年代測定法が大きく前進した.上述の青田遺跡から出土した80本の木柱の年輪年代が確定され,さらに,2グループ間の年代差が60年であることが決定された(木村2012).
このように,遺跡出土木材の暦年代決定には,14C年代測定,年輪幅年輪年代測定,δ18O変動パターン編年の三種類の方法をうまく組み合わせて活用することが大切である.
このように,遺跡出土木材の暦年代決定には,14C年代測定,年輪幅年輪年代測定,δ18O変動パターン編年の三種類の方法をうまく組み合わせて活用することが大切である.