日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)、森田 澄人(独立行政法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門)

18:15 〜 19:30

[MIS24-P07] 第四紀後期の日本海東縁におけるメタン関連種Rutherfordoides cornutaの産出

*大井 剛志1石浜 佐栄子2角和 善隆1松本 良1 (1.明治大学ガスハイドレート研究所、2.神奈川県立生命の星・地球博物館)

キーワード:海水準低下, 底生有孔虫, メタンハイドレート, 最終氷期, メタン湧水, Rutherfordoides

研究背景
底生有孔虫は底層水や海底堆積物組成のさまざまな変化に適応して棲み分けしており,日本海では外洋と大きく異なる日本海固有水塊に対応する膠着質群集の存在や第四紀後期の劇的な環境変動に対応した貧酸素種群の変遷が特徴的である.一方,日本周辺の深海底に複数存在するメタンバブル湧出域ではバクテリアや大型生物などが特殊な底生生態系を形成しているため,底生有孔虫種の中にも特異な種が存在することが予想される.Rutherfordoides cornutaは相模湾の冷湧水に伴う間隙水のメタン濃度と相関がある(秋元ほか,1996)とされ,北西太平洋のいくつかの海域から生息しているが,現在の日本海からは生息が確認されていない(的場・中川,2009).このことから,本種はメタン濃度のほかにも日本海固有水という低温で特殊な深層水の存在が関わっているのかもしれない.それに対して,日本海上越沖海鷹海脚域の最終氷期最盛期(LGM)にあたる約2万年前前後(27-17 ka)では,R. cornutaの近縁種であるRutherfordoides rotundataが産出することが報告されている(中川ほか,2009).このことは,底生有孔虫殻の炭素同位体組成の異常(竹内ほか,2007)などと対応しており,海水準低下に伴うメタンハイドレートの不安定化とメタン湧出が海底で起きていたことを表している(松本ほか,2009;中川ほか,2009).
研究目的
筆者は,上越沖のみならず隠岐島周辺域や飛島西方域などの日本海の様々なメタンハイドレート胚胎域において得られた堆積物から抽出した有孔虫化石群集を分析し,これらからR. rotundataでなく複数のR. cornutaの産出を確認した.本発表では,これまで確認されたR. cornutaの産出域や産出年代に基づき,それぞれの海域におけるハイドレートの成長や分解と関連した特異な地質環境解析を説明する.
試料と年代
研究試料は,上越沖海鷹海脚MD179-3304と隠岐トラフ西方域UT13-PC1303と最上トラフ北方域HR14-RC1408の3海域で採取された堆積物コアである.それぞれの堆積年代は,放射性炭素年代(14C)・安定酸素同位体比イベント年代・テフラ年代・TL層の下限年代に基づいて求められた.
研究成果
R. cornutaの産出は3海域の堆積物コアすべてから確認され,それぞれの堆積年代は約25-28kaの範囲のLGM初期となる.その後(上位)に分布する厚い暗色のTL-2層では,激減する底生有孔虫個体数からほとんどの底生有孔虫種が生息できない特異な無酸素環境が支持される一方,R. cornutaR. rotundataの産出からメタン湧水が持続していたことが示唆される(中川ほか,2009).このことから,LGMの日本海では,隠岐トラフ西方~海鷹海脚~最上トラフ北方における胚胎海域でハイドレートの分解に伴うメタン湧出イベントがそれぞれほぼ同時期に起きていた可能性が高まった.
 加えて,最上トラフ北方のRC1408で得られたMIS6やMIS8の低海水準期試料からも,底生有孔虫組成の詳細な分析を行い,メタン湧出との関連性について議論する予定である.
謝辞
 MDコアはMH21のプロジェクトの一部として、HR14コアは「平成26年度経産省メタンハイドレート開発促進事業」の一環として、それぞれ実施・採取されたものである。?