日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

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[U-04] 地球惑星生命フロンティア開拓

2015年5月27日(水) 11:00 〜 12:45 国際会議室 (2F)

コンビーナ:*鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、村上 隆(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鈴木 正哉(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、横山 正(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、光延 聖(静岡県立大学環境科学研究所)、座長:光延 聖(静岡県立大学環境科学研究所)、福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)

11:45 〜 12:15

[U04-06] 超高解像度古環境復元-シャコ貝殻から引きだされた日射量情報-

*佐野 有司1 (1.東京大学 大気海洋研究所)

キーワード:海洋古環境, 日射量, ナノシムス, シャコ貝殻

サンゴや二枚貝などの海洋生物は,成長する際の周囲の水温や塩分などの環境情報を記録しながら炭酸塩を主成分とする骨格や殻を作る.一度作られた炭酸塩骨格は死後も化石として長い間情報を保持する.生物起源の炭酸カルシウムの微量元素や同位体分析による古環境の復元は,測器による観測点がまばらで樹木年輪や氷床コアによるデータが乏しい熱帯や亜熱帯地域で威力を発揮し、IPCCなどの気候変動評価に大きく貢献した[1].しかしこれまでの分析法での空間分解能はたかだか数十ミクロン,時間分解能に換算すると数日が限界であった.本プロジェクトでは,生物起源炭酸カルシウム骨格中の微量元素を従来とくらべて飛躍的に高い空間分解能で分析することにより,海洋生物が成長する際の水温,塩分など環境情報を最高レベルの高時間分解能で復元することを目的とした.具体的には,従来の分析手法と比較して非常に高い空間分解能で固体試料が分析可能な二次元高分解能二次イオン質量分析法(NanoSIMS)を用いて生物起源炭酸塩を分析した.
本研究では,初めにNanoSIMSの高度なチューニング,標準試料の開発・作成,微量元素分析手法の確立を行った[2].この分析手法を2002年から2005年にかけて沖縄県石垣島川平湾で飼育したシャコ貝(ヒレナシ)の殻と同島白保海岸で2007年8月に採取した化石のシャコ貝(オオシャコ)に応用した.飼育したシャコ貝殻では,低解像度の分析(分解能50ミクロン)によりSr/Ca比が夏に低く,冬に高い年周変動が計測された.また高解像度の分析(分解能2ミクロン)では,Sr/Ca比が昼に形成される部分で低く,夜には高くなる日周変動が計測された.データ解析の結果,これらの変動は日射量に応答することが解った[3].化石シャコ貝殻の形成年代は,放射性炭素により約5000年前と推定された.成長速度から見積もった約2年分の試料を切り出し詳細に分析した.その結果,飼育した試料と同様のSr/Ca比の年周変動と日周変動が測定された.飼育試料の日射応答関数と冬に相当する部分の高解像度データから,2-3時間の分解能で,約5000年前の日射量の変化が復元できることを示した[4].
[参考文献]
[1] Henderson (2002) Earth Planet. Sci. Lett. 203, 1-3. [2] Sano et al. (2005) Anal. Sci. 21, 1091-1097. [3] Sano et al. (2012) Nature Commun. 3, 761. [4] Hori et al. (2015) Scientific Reports, in press.