日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 102B (1F)

コンビーナ:*戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)、森田 澄人(独立行政法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門)、座長:八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)

09:15 〜 09:30

[MIS24-07] 白嶺1403コアのメタンハイドレートから分離された石油状物質のバイオマーカー組成

*荻原 成騎1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:日本海, メタンハイドレート, バイオマーカー

白嶺1403コア深度27m付近より採取された厚いメタンハイドレート層より、石油状物質を溶解分離した。このハイドレート層上位の円礫層には、石油状物質の付着が見られた。バイオマーカーの分離抽出後、GC/MS分析を行い、石油状物質の性質、成因、熱および微生物分解の履歴を議論した。
黄色~茶色のハイドレートは、室温にて静置溶解させると、水層の表面に茶色の石油状物質が分離した。表面に浮く石油状物質をピペットにて0.1ml吸い上げ、2mlのヘキサン中に投下した。礫に付着する石油状物質については、溶媒(DCM:MeOH/93:7)中にて超音波抽出法によって分離した。硫酸マグネシウムにて脱水の後、窒素吹付法にて溶媒を乾固、シリカゲル絡むクロマトグラフィーにて分画した。本報告では、炭化水素画分とケトン・エステル画分について、GC/MS分析のうち、炭化水素画分、ケトン・エステル画分の分析結果を示し、石油状物質の成因、熱および微生物分解の履歴を議論する。
 ハイドレートから採取した石油状物質の炭化水素画分は、 低炭素数側においてHump(こぶ)が見られ、二つの二環化合物(bicyclic sesquiterpanes)が角のように分布する。25-tetracyclic terpaneと少量のab-hopaneが検出された。これに対して、n-alkaneおよびpristane , phytane で代表されるacyclic isoprenoid炭化水素、およびsteroid炭化水素は全く検出されなかった。このような特徴は、heavy biodegradation を被ったoilの特徴とよく一致する。
 ケトン・エステル画分のクロマトグラムには、環状構造を持つ化合物が複数認められた。多数のhopanic (hopenic) ketone (微生物マーカー)、さらに、lupanoid ketone, ursranoid ketone (被子植物マーカー)が検出された。これたの化合物の個別炭素同位体組成は、はぼ-30‰であった。Hopanic ketoneは、それ自体報告例の少ない珍しい化合物であり、hopanoidの酸化、biodegradationによって生成されたと考えられている。
 以上の分析結果より、白嶺1403メタンハイドレートから分離された石油状物質は、強いbiodegradationを被った石油(原油)である。この結果は、地層中における有機物の活発な微生物分解活動を示している。lupanoid ketone, ursanoid ketoneは 被子植物マーカーであることが知られており、原油状物質の起源に陸上有機物の寄与が大きいことが予想される。
本研究は「平成26年度経産省メタンハイドレート開発促進事業」の一環として実施されたものである。