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[SSS28-29] 2014年11月22日長野県北部の地震(Mw 6.2)で生じた地表地震断層の分布と変位量
キーワード:活断層, 内陸地震, 糸魚川ー静岡構造線活断層系, 神城断層, 地震時変位量
2014年11月22日長野県北部を震源としたMw6.2の地震は,糸魚川―静岡構造線活断層系北端を構成する神城断層上で発生した.この地震は,既知の神城断層トレースに沿う明瞭な地表地震断層を伴った.しかし,神城断層はM7以上の地震が予想される全長24kmの活断層であるのに対し,今回の地震規模は比較的小さく,伴われる地表地震断層も有意に短い.我々は,詳細な地表地震断層の記載,および地表変位と地震規模の関係を検討するため,地表地震断層および地形変状のマッピングと,42地点における地表変位量の計測調査を実施した.
調査の結果,地表地震断層は,北城盆地の北端部から神城盆地の中央部までの約9kmの区間で認められた.地表地震断層は,一部区間においては断層走向と平行に流下する姫川に沿うものの, 北北東-南南西走向にほぼ連続する.変位様式は,ほぼ全ての地点で東側もしくは南東側隆起の純粋な逆断層もしくはスラストを示し,走向の変化によるみかけの横ずれ成分を一部で伴う.なお,地表地震断層の北端部周辺には,局所的なポップアップ構造や西側もしくは北西側隆起のバックスラストが認められる.
本地震に伴う地表地震断層は,連続性および変位量分布から,本震の震源により近い北側の主要部と,神城盆地付近の従属部に分けられる.地表地震断層主要部は,北城盆地北部の塩島から飯田までの約7kmの区間で,一般走向はN20°EからN30°Eを示し,大局的には北から南に向かって変位量が減少する.北端部に近い塩島地区において上下変位量約90cmが認められ,併走するバックスラストの上下変位量を断層走向の直交方向に加算し,本地震に伴う最大変位量140cmが得られた.一方,主要部のより南側に位置する,地表地震断層の従属部は,神城盆地の湖成堆積物が分布する飯田から三日市場までの約2kmの区間で認められ,走向はN20°EからN20°Wまで変化に富む.上下変位量および水平短縮量は30cm程度以下であり,短縮変形により破壊された構造物や撓曲変形が生じる田圃の位置は,明瞭な変動地形が示す神城断層の位置と必ずしも一致しない.そのため,これらの地表変位は湖成堆積物中に発達した副次的な地表地震断層と判断される.
本調査で認められた地表地震断層は, 神城断層に沿う全長約9kmであるものの,既知の神城断層全長に比べ15kmも短い.しかし,地表地震断層の北方および南方延長には明瞭な変動地形が連続して認められている(東郷ほか,1996;松多ほか,2006).また,本震の震源位置は地表地震断層の北端近くに位置するが,余震震源の分布はさらに北へ約5km以上連続し,本震の震源断層面もさらに北側へ延長すると考えられる.以上から,今回のM6.2の地震は神城断層の一部区間によって引き起こされたと考えられる.
本地震の最大変位量は140cmで,松田(1975)の経験式によると地震規模と比較して変位量が大きいように見える.しかし, Wesnousky(2008)によってまとめられた世界の歴史地震に伴う地震断層データと比較すると,本地震の地表地震断層長と地表変位量の関係は,逆断層地震型のデータとよく整合する.これは,松田(1975)の式が主として横ずれ断層型地震のデータを基にした経験式であり,逆断層において小さくなるアスペクト比が反映されていないためと考えられる.
また,この地震による最大変位量(140cm)と既存研究による地震の再来間隔(1100〜2400年 ; 奥村ほか, 1998)からは,神城断層の平均変位速度はおおよそ0.4-0.8 mm/yrと見積もることもできる.しかし,この値は,地形・地質学的調査による後期更新世以降の神城断層の平均変位速度1.5-2.7 mm/yr(下川・山崎, 1987; 今泉ほか, 1997; 松多ほか, 2001)より有意に小さい.すなわち,今回の地震は,M7以上の地震をくり返し起こす神城断層においては非固有規模の変則的な地震と考えられる.このような神城断層における非固有地震の頻度を解明する為には,同タイプの地震発生間隔や変位量を古地震学的に明らかにする必要がある.
調査の結果,地表地震断層は,北城盆地の北端部から神城盆地の中央部までの約9kmの区間で認められた.地表地震断層は,一部区間においては断層走向と平行に流下する姫川に沿うものの, 北北東-南南西走向にほぼ連続する.変位様式は,ほぼ全ての地点で東側もしくは南東側隆起の純粋な逆断層もしくはスラストを示し,走向の変化によるみかけの横ずれ成分を一部で伴う.なお,地表地震断層の北端部周辺には,局所的なポップアップ構造や西側もしくは北西側隆起のバックスラストが認められる.
本地震に伴う地表地震断層は,連続性および変位量分布から,本震の震源により近い北側の主要部と,神城盆地付近の従属部に分けられる.地表地震断層主要部は,北城盆地北部の塩島から飯田までの約7kmの区間で,一般走向はN20°EからN30°Eを示し,大局的には北から南に向かって変位量が減少する.北端部に近い塩島地区において上下変位量約90cmが認められ,併走するバックスラストの上下変位量を断層走向の直交方向に加算し,本地震に伴う最大変位量140cmが得られた.一方,主要部のより南側に位置する,地表地震断層の従属部は,神城盆地の湖成堆積物が分布する飯田から三日市場までの約2kmの区間で認められ,走向はN20°EからN20°Wまで変化に富む.上下変位量および水平短縮量は30cm程度以下であり,短縮変形により破壊された構造物や撓曲変形が生じる田圃の位置は,明瞭な変動地形が示す神城断層の位置と必ずしも一致しない.そのため,これらの地表変位は湖成堆積物中に発達した副次的な地表地震断層と判断される.
本調査で認められた地表地震断層は, 神城断層に沿う全長約9kmであるものの,既知の神城断層全長に比べ15kmも短い.しかし,地表地震断層の北方および南方延長には明瞭な変動地形が連続して認められている(東郷ほか,1996;松多ほか,2006).また,本震の震源位置は地表地震断層の北端近くに位置するが,余震震源の分布はさらに北へ約5km以上連続し,本震の震源断層面もさらに北側へ延長すると考えられる.以上から,今回のM6.2の地震は神城断層の一部区間によって引き起こされたと考えられる.
本地震の最大変位量は140cmで,松田(1975)の経験式によると地震規模と比較して変位量が大きいように見える.しかし, Wesnousky(2008)によってまとめられた世界の歴史地震に伴う地震断層データと比較すると,本地震の地表地震断層長と地表変位量の関係は,逆断層地震型のデータとよく整合する.これは,松田(1975)の式が主として横ずれ断層型地震のデータを基にした経験式であり,逆断層において小さくなるアスペクト比が反映されていないためと考えられる.
また,この地震による最大変位量(140cm)と既存研究による地震の再来間隔(1100〜2400年 ; 奥村ほか, 1998)からは,神城断層の平均変位速度はおおよそ0.4-0.8 mm/yrと見積もることもできる.しかし,この値は,地形・地質学的調査による後期更新世以降の神城断層の平均変位速度1.5-2.7 mm/yr(下川・山崎, 1987; 今泉ほか, 1997; 松多ほか, 2001)より有意に小さい.すなわち,今回の地震は,M7以上の地震をくり返し起こす神城断層においては非固有規模の変則的な地震と考えられる.このような神城断層における非固有地震の頻度を解明する為には,同タイプの地震発生間隔や変位量を古地震学的に明らかにする必要がある.