16:45 〜 17:00
[SSS28-03] 式根島における隆起貝層からみた後期完新世の隆起:1498・1605年の大津波の波源域に関する含蓄
キーワード:式根島, 隆起貝層, 後期完新世, 隆起, ^{14}C年代
2013年,国から「南海トラフの地震活動の長期評価の第二版」が公表され,フィリピンプレート内の遠州灘~銭州海嶺付近~新島・神津島付近~相模トラフのどこかにも,巨大地震の震源域に含まれる領域が存在する可能性が示唆された.一方,伊豆半島沖の式根島では,福富(1938)が離水貝層を発見し,約3 mの隆起が起きたことを報告していた.この隆起をもとに羽島(1975)は,1498年の明応地震(M8.6)の津波波源域を東海沖~伊豆半島南方沖と推定した.また,相田(1981)は明応地震とともに1605年の慶長地震の津波波源域を東海沖~伊豆半島南方沖に置いたモデルを提示した.これに対して,太田ほか(1983)は島内3か所で離水貝層の14C年代を測定し,約1400年前に隆起したことを明らかにし,上記の仮説を否定した.だが,最近,中田ほか(2013)は,神津島から銭洲を経て浜名湖沖に達する銭洲海嶺の南縁に沿う銭洲断層系活断層(全長275 km)が,明応地震の震源断層の可能性を指摘している.こうした状況を踏まえ,本研究では,先行研究よりも遥かに高精度の年代決定を可能とした加速器質量分析装置で,式根島の隆起貝層の14C年代を測定し,1498年明応地震の津波および1605年の慶長地震の津波の波源域としての東海沖~伊豆半島南方沖の可能性を検討した.その結果,以下のことが明らかとなった.
1.本研究で式根島において,新たに4地点で離水生物遺骸を発見した.
2.年代-高度分布から,隆起貝層は3つのグループに分けられ,これは過去1000年間に3回の突発的隆起事件が起きた可能性を示唆する.
3.隆起事件の年代と最大隆起量は,西暦1120-1400年で0.4 m,1530-1890年で1.8 m,1860-1950年で1.0 m,と見積もられる.
4.西暦1858-1950年の隆起は,式根島の南東沖で起きた1890年の地震による可能性が高い.
5.西暦1120-1400年と1530-1890年の隆起は,1498年明応地震の津波および1605年の慶長地震の津波の波源域としての東海沖~伊豆半島南方沖の可能性を支持しない.
1.本研究で式根島において,新たに4地点で離水生物遺骸を発見した.
2.年代-高度分布から,隆起貝層は3つのグループに分けられ,これは過去1000年間に3回の突発的隆起事件が起きた可能性を示唆する.
3.隆起事件の年代と最大隆起量は,西暦1120-1400年で0.4 m,1530-1890年で1.8 m,1860-1950年で1.0 m,と見積もられる.
4.西暦1858-1950年の隆起は,式根島の南東沖で起きた1890年の地震による可能性が高い.
5.西暦1120-1400年と1530-1890年の隆起は,1498年明応地震の津波および1605年の慶長地震の津波の波源域としての東海沖~伊豆半島南方沖の可能性を支持しない.