18:15 〜 19:30
[SGD21-P01] 日本列島の重力変化と上下変位
キーワード:重力時間変化, 地殻変動, GRACE, GNSS, 雪氷, 陸水
日本列島は積雪によって冬季に地面が沈降することが知られている(e.g. Heki, 2001)。その積雪により、冬季には重力場が強められることが予想される。Heki (2010)は、重力衛星GRACE (Gravity Recovery And Climate Experiment)のデータを用いることで、東北日本の重力場が、夏季と比べ冬季の方が僅かに強いことを示した。しかしながら、当時のGRACEデータの限られた精度では、東北日本の年周変化を辛うじて抽出できる程度で、各地方の重力変化の特徴やその年々変動を捉えるまでには至らなかった。本研究は、最新のGRACEデータと解析技術を導入し、日本列島の重力時間変化をより詳細に導出し議論する。
使用したGRACEデータは、フランス国立宇宙研究センター(CNES)が提供するGRACE solutions RL03-v1である。従来のGRACE重力場解(例えばCSR RL05解など)と比べると、大気・海洋の折り返し雑音を補正するためのモデルが格段に良くなっている。また、海洋潮汐を補正するためのモデルも古いバージョン(FES2004)から最新のバージョン(FES2012)へと更新されている。このデータの空間分解能は約250 kmで、従来のもの(約333km)よりも良くなっている。
周囲の海域からの漏れこみ誤差やランダム誤差の影響を抑えるため、スレピアン関数を用いた空間局在化処理(Slepian localization)を施す(Wieczorek & Simons, 2005)。Slepian localizationとは、球面調和場に対するウェーブレット解析の一種で、対象となる空間領域(ここでは日本列島)のみのシグナルを適切に抽出する手法である。この処理においては、主成分分析の概念も利用するため、ランダム誤差を多少軽減する効果もある。以上の処理を行ったのち、日本列島の各地点の重力時間変化を導出する。なお、ここで示す重力変化は、質量変化によるもので、高さ変化によるものは含まない。
解析結果、日本列島の各地方で明瞭な重力季節変化が検出された。東北地方では、積雪融解期の直前である3月に重力の最大ピーク、7月に最小ピークが見られた。これは、先行研究とも一致している。観測された重力異常値(標準値からのズレ)は、最大で約4.8μGal, 最小で約-1.1μGalであった。また、北海道でも同じく、3月に重力の最大ピーク、7月に最小ピークが見られた。先行研究では、東北地方と北海道のシグナルは一続きに見えていたが、本解析では両者のシグナルは明瞭に分離できており、それぞれ区別して議論することが可能である。観測された重力異常値は、最大で約4.1μGal, 最小で約-2.7μGalであった。重力異常の最小値は、東北地方と比べると北海道の方が小さい。これは、北海道が梅雨の影響を受けづらいことに起因する。一方で、西日本では、これら東日本とは異なった特徴が見られた。重力の最大ピークは9月に見られ、最小は2月に見られた。東日本とはほぼ正反対の位相である。これは、西日本では冬季の積雪がほとんどなく、夏季の降雨による土壌水分量の変化が顕著であることを反映する。観測された重力異常値は、最大で約1.7μGal, 最小で約-2.9μGalであった。
このような季節変化に加えて、年々変化も確認された。例えば、東北日本では、2006年の冬と2011年の冬に、例年よりも大きな重力変化を示しており、それぞれ最大で約6.8μGalと約9.1μGalの重力変化が検出された。これは、例年の約4.8μGalと比べて、おおよそ1.5倍から2倍の大きさである。このような重力の異常増加は、記録的な豪雪が観測された時期と良く一致していた。
以上の結果を検証するために、地殻の上下変位を解析する。ここでは、国土地理院が展開する稠密GNSS観測網(GEONET)のデータを用いる。国土地理院がルーチン解析(F3)で使用しているソフトウェア(Bernese5.0)は、大気遅延効果を補正するためのマッピング関数にやや古いモデル(Niell, 1996)が用いられており、上下変位に季節的な誤差が含まれていることが分かっている(Munekane, 2010)。そこで本研究では、オープンソースのGNSS測位プログラムRTKLIB v2.4.2 (Takasu, 2010)を用いることで、最新のマッピング関数を導入しつつ、単独精密測位(PPP)観測によって上下変位を推定する。本講演では、その比較検討の結果についても報告する。
使用したGRACEデータは、フランス国立宇宙研究センター(CNES)が提供するGRACE solutions RL03-v1である。従来のGRACE重力場解(例えばCSR RL05解など)と比べると、大気・海洋の折り返し雑音を補正するためのモデルが格段に良くなっている。また、海洋潮汐を補正するためのモデルも古いバージョン(FES2004)から最新のバージョン(FES2012)へと更新されている。このデータの空間分解能は約250 kmで、従来のもの(約333km)よりも良くなっている。
周囲の海域からの漏れこみ誤差やランダム誤差の影響を抑えるため、スレピアン関数を用いた空間局在化処理(Slepian localization)を施す(Wieczorek & Simons, 2005)。Slepian localizationとは、球面調和場に対するウェーブレット解析の一種で、対象となる空間領域(ここでは日本列島)のみのシグナルを適切に抽出する手法である。この処理においては、主成分分析の概念も利用するため、ランダム誤差を多少軽減する効果もある。以上の処理を行ったのち、日本列島の各地点の重力時間変化を導出する。なお、ここで示す重力変化は、質量変化によるもので、高さ変化によるものは含まない。
解析結果、日本列島の各地方で明瞭な重力季節変化が検出された。東北地方では、積雪融解期の直前である3月に重力の最大ピーク、7月に最小ピークが見られた。これは、先行研究とも一致している。観測された重力異常値(標準値からのズレ)は、最大で約4.8μGal, 最小で約-1.1μGalであった。また、北海道でも同じく、3月に重力の最大ピーク、7月に最小ピークが見られた。先行研究では、東北地方と北海道のシグナルは一続きに見えていたが、本解析では両者のシグナルは明瞭に分離できており、それぞれ区別して議論することが可能である。観測された重力異常値は、最大で約4.1μGal, 最小で約-2.7μGalであった。重力異常の最小値は、東北地方と比べると北海道の方が小さい。これは、北海道が梅雨の影響を受けづらいことに起因する。一方で、西日本では、これら東日本とは異なった特徴が見られた。重力の最大ピークは9月に見られ、最小は2月に見られた。東日本とはほぼ正反対の位相である。これは、西日本では冬季の積雪がほとんどなく、夏季の降雨による土壌水分量の変化が顕著であることを反映する。観測された重力異常値は、最大で約1.7μGal, 最小で約-2.9μGalであった。
このような季節変化に加えて、年々変化も確認された。例えば、東北日本では、2006年の冬と2011年の冬に、例年よりも大きな重力変化を示しており、それぞれ最大で約6.8μGalと約9.1μGalの重力変化が検出された。これは、例年の約4.8μGalと比べて、おおよそ1.5倍から2倍の大きさである。このような重力の異常増加は、記録的な豪雪が観測された時期と良く一致していた。
以上の結果を検証するために、地殻の上下変位を解析する。ここでは、国土地理院が展開する稠密GNSS観測網(GEONET)のデータを用いる。国土地理院がルーチン解析(F3)で使用しているソフトウェア(Bernese5.0)は、大気遅延効果を補正するためのマッピング関数にやや古いモデル(Niell, 1996)が用いられており、上下変位に季節的な誤差が含まれていることが分かっている(Munekane, 2010)。そこで本研究では、オープンソースのGNSS測位プログラムRTKLIB v2.4.2 (Takasu, 2010)を用いることで、最新のマッピング関数を導入しつつ、単独精密測位(PPP)観測によって上下変位を推定する。本講演では、その比較検討の結果についても報告する。