日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG36] 惑星と閉鎖生態系における生物のシステム―微生物からヒトまで

2015年5月24日(日) 14:15 〜 16:00 101B (1F)

コンビーナ:*富田ー横谷 香織(筑波大学大学院生命環境科学研究科)、小島 洋志(なし)、座長:富田ー横谷 香織(筑波大学大学院生命環境科学研究科)

14:18 〜 14:33

[HCG36-01] 陸棲ラン藻 {i}Nostoc{/i} sp. HK-01 の閉鎖生態系における有用性

*木村 駿太1木村 靖子2加藤 浩3新井 真由美4佐藤 誠吾1富田-横谷 香織1 (1.筑波大学、2.筑波大学、十文字女子大学、3.三重大学、4.日本科学未来館)

キーワード:閉鎖生態系, ラン藻, 食資源, {i}Nostoc{/i} sp. HK-01

将来、火星をはじめとする地球外の環境で長期有人宇宙活動を行うために、人工的に作出する閉鎖生態系の設計が必要となる。閉鎖生態系の設計を試みるとき、安定した食資源の確保は極めて重要な課題のひとつである。我々は、世界各地で伝統的に食資源として利用されているラン藻の食資源利用を提案し、研究を行っている。ラン藻は栄養的価値および生理機能性を備えていることが明らかにされていることから、生物種数が限られる閉鎖生態系において食資源として期待できる。
宇宙環境で導入・利用される生物は、過酷な環境に曝される可能性が想定されることから、ラン藻のなかでも環境耐性に優れた種が適していると考えている。陸棲ラン藻Nostoc sp. HK-01は、光合成能、窒素固定能を具備することから、窒素源、炭素源を含まない火星模擬レゴリス上で140日間増殖が確認されている。さらに、乾燥、真空、熱、紫外線、γ線および重粒子線(He)に対する高い宇宙環境耐性が既に証明されていることから、導入生物として高く期待できるが、食資源としての検討はまだなされていない。
 我々は、有人宇宙活動における陸棲ラン藻Nostoc sp. HK-01の食資源としての有用性を検証した。火星模擬レゴリス上で8年間長期保存したNostoc sp. HK-01が生活活性を失わず生存していることを、FDA(Fluorescein diacetate)蛍光染色法を用いた顕微鏡観察により確認した。Nostoc sp. HK-01が他の陸棲ラン藻5種と比べて高い増殖能を具備していることを、液体および寒天培地培養後の、体積および面積測定により明らかにした。Nostoc sp. HK-01藻体の含むエネルギーを、たんぱく質量および糖量を元素分析およびフェノール硫酸法を用いて定量することにより明らかにした。
 これら陸棲ラン藻Nostoc sp. HK-01の食資源としての有用性について報告し、有人宇宙活動にラン藻を導入することで生産・活用できるエネルギーについて考察する。本株の、閉鎖生態系における食資源としてのリサイクルのための技術についても議論したい。