日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL40] 地域地質と構造発達史

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*山縣 毅(駒澤大学総合教育研究部自然科学部門)、大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

18:15 〜 19:30

[SGL40-P01] モンゴル中北部の付加体形成過程とその起源

*上田 哲也1大藤 茂1藤本 辰弥1高地 吉一1山本 鋼志2 (1.富山大学大学院理工学教育部、2.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:ウラン-鉛年代, 砕屑性ジルコン, レーザー誘導結合プラズマ質量分析計, モンゴル, CAOB, 後背地

はじめに 中央アジア造山帯の中央部に位置するモンゴルは,複雑な地質体から構成され,その構造発達史は十分解明されてはいない.本論は,構造発達史解明の一段階として,砕屑性ジルコンのU-Pb年代分布からモンゴル中北部を構成する付加体のテクトニクス場と後背地の解明を試みた.
地質概説 モンゴル中北部は前期古生代の砕屑岩類を挟む浅海成層及び付加体で構成されるハラーテレーン及びバヤンゴルテレーンと,中古生代の付加体及びそれを不整合に被覆する浅海性層起源のヘンテイテレーンから成る.ヘンテイテレーンの付加体を構成する遠洋性チャート層は後期シルル紀のコノドント化石及び前期-後期放散虫化石を産出(Kurihara et al., 2009)し,その上位層の泥岩は前期石炭紀腕足類化石を産出する.
測定結果 モンゴル中北部の付加体から砂岩13試料を採取し無作為にジルコンを200粒程抽出した.砕屑性ジルコンのU-Pb年代は名古屋大学環境学研究科設置のレーザー照射型誘導結合プラズマ質量分析計を用いて測定した.測定した13試料の内付加体の見かけ下部に当たる10試料は,相対確率分布図上で単一の大ピークを持ち,先カンブリアジルコンの個数比(以下%Pc)が12 %未満であった.一方,見かけ上位の3試料は,420-650 Maに卓越したピークをもち,700-1000 Ma,1600-2200 Ma,2300-2700 Maに小ピークをもった.ここでは前者を単峰型,後者を多峰型と呼ぶ.モード測定結果から,本研究で,410-374 Maと358-339 Maにピークを持つ砂岩は火山岩片を多く含み,289-245 Maにピークが集中する砂岩は激しい変形・変成を被っていた.
考察
砂岩の堆積年代 モード測定結果より,大多数の砂岩試料が火山岩片を多く含む石質砂岩で,堆積時の火成ジルコンを含んでいると考えられたため,最も若い年代ピークを堆積年代と捉えた.
付加体に見られる年代極性 先行研究(Kelty et al., 2008:Bussien et al., 2014)で示された付加体砂岩19試料のU-Pb年代にも,同様な単峰型・多峰型年代分布が認められた.計32試料の相対確率分布上で,単峰型のピークは410-374 Ma,358-339 Ma,289-245 Maにそれぞれ集中し,多峰型の最も若いピークは526-426 Maに集中した.砂岩の堆積年代≒付加体形成年代と仮定すると,モンゴル中北部の付加体は,上位より,①カンブリア紀-シルル紀(526-426 Ma)の多峰型と,②前期-中期デボン紀(410-374 Ma),③前期石炭紀(358-339 Ma),及び④前期ペルム紀-前期三畳紀(289-245 Ma)の単峰型に区分される.付加年代には,日本の付加体に見られるような見かけ下位ほど若くなる年代極性が認められ,その変化は断続的である.
付加体を集積した火成弧 モンゴル中北部から北西部に分布する微小大陸のTuva-Mongol Massifには,古生代の火成岩体が広く分布するが,中期-後期デボン紀(385-345 Ma)の火成岩を欠く.この年代幅にモンゴル中北部の付加年代欠如期の一つ(373-359 Ma)が収まるので,モンゴル中北部の付加体はTuva-Mongol Massifの縁辺で形成された蓋然性が高いと考えた.多峰型の年代分布には750-450 MaのPan-Africa造山運動時のジルコンを含む事からGondwana大陸を形成していた諸大陸縁辺で堆積したと考えられる.本研究の多峰型とよく似たピーク形態として,Saharan Metacraton,Kufra Basinのカンブリア-オルドヴィス系のが挙げられる:すなわち,450-750 Maに卓越したピークをもち,800-1000 Ma,1600-2200 Ma,2300 Ma-2800 Maに小ピークをもつ(引用).
付加体形成史 以上から,モンゴル中北部付加体の形成史を以下に示す.
・カンブリア紀-シルル紀にSaharan Metacratonの縁辺に付加した後,後期シルル紀までに大陸の一部(Tuva-Mongol Massif)とともにリフティングした.
・前期デボン紀にTuva-Mongol Massif縁辺に沈み込み帯が形成され,付加体が形成された.
・中・後期デボン紀間にこの沈み込みは一度終息し,前期石炭紀に再び沈み込み帯が形成されたが,構造性侵食により中・後期石炭紀付加体は削剥された.
・前期ペルム紀以降は付加体形成が構造性侵食を上回り,前期三畳紀後にこの沈み込みは終息した.