14:15 〜 14:30
[SMP43-01] EBSDとEPMAデータに基づくザクロ石に記録された変成履歴の解析
キーワード:EBSD, EPMA, ざくろ石, 変成履歴
EBSD(電子線後方散乱回折)法およびEPMA(電子線微小領域分析装置)情報を組み合わせて,ざくろ石に記録されている変成,変形履歴を解読することを試みた.研究事例として用いた試料は,沈み込み帯で形成された高P/T型三波川変泥質岩とミャンマーに産するMogok高温変泥質岩である.
三波川変泥質岩(UKE04N07b)
四国別子地域のエクロジャイトユニットから採取された試料.同ユニットの岩石は,エクロジャイト相累進変成作用 (1.7-1.9GPa/470-530℃) → 減圧・加水反応 → 緑れん石-角閃岩相累進変成作用 (〜1.0-1.1GPa/600-630℃) という,圧力-温度履歴を経験している (例えば,Kouketsu et al., 2014, IAR, 263-280).基質を構成する主要鉱物は,ざくろ石,黒雲母,フェンジャイト,緑れん石,曹長石,石英および石墨である.ざくろ石は組成累帯構造によって,パラゴナイトや高残留圧力(〜0.8-0.9GPa)を保持する石英を包有しエクロジャイト相で形成された内側領域(Alm67-73Sps3-10Prp4-10Grs16-21: 他の試料ではオンファス輝石を含むこともある)とそれを組成的に不連続に取り囲んで成長し,よりMnに乏しくCaに富み緑れん石-角閃岩相で形成された外側領域 (Alm56-66Sps0-10Prp4-9Grs26-36)からなる.そして,組成累帯構造の特徴から,ざくろ石は単結晶であるようにみえる.これに対し,EBSD分析からは,このざくろ石が単結晶ではなく,結晶学的方位の異なる4つの領域(各領域相互の不適合の程度は,少なくとも40°-59°)からなることが明らかとなった.一方,境界を挟んで隣同士の領域に包有される石英粒は,1°-6°の範囲内で共通する結晶学的方位を持つ例が多数観察される.なお,ざくろ石のそれぞれの領域はいずれもエクロジャイト相および緑れん石-角閃岩相変成作用での成長を示す共通の変成履歴を保持している.これらの情報から,検討したざくろ石は,次の様な過程を経て形成されたと考えられる:エクロジャイト相条件下で複数の結晶粒の集合体として成長を開始 → 集合体の周囲や境域境界に沿って部分的に加水分解 → 緑れん石-角閃岩相条件下での再成長.
Mogok変泥質岩(S22b)
ミャンマー・Mandalay北西のSagaing断層沿いの上部角閃岩相〜グラニュライト相地域から採取された試料.基質を構成する主要鉱物は,ざくろ石,黒雲母,斜長石,カリ長石,石英,イルメナイト,および石墨である.また,ざくろ石の包有物として珪線石が認められる.それらの組成共生関係から見積もられる圧力温度条件はよそ0.8GPa/800℃である (Maw Maw Win, 2014 私信).ざくろ石はより大きな粒が加水分解してできたと考えられる他形粒の集まりを形成しており,個々のざくろ石粒は組成的に均質なコア部と外側に向かってMnおよびFeが漸増しMgが漸減するマントル部からなる累帯構造を示す (Alm60-70Sps1-3Prp20-33Grs5-7).したがって,ざくろ石の加水分解は,ざくろ石内で元素拡散が進行する比較的高温条件下で起こったと考えられる.また,ざくろ石の粒界に産する黒雲母や斜長石の組成共生関係からざくろ石が加水分解した時期の圧力温度条件は,0.2-0.4GPa/580-630℃程度と見積もられる.一方,EBSDによる分析によれば,これらざくろ石粒は互いに3本の結晶軸を全て共有している(不適合の度合いは最大でも1-4°).これらの点から,今回検討した試料は,ざくろ石の明瞭な回転を生ずるような変形作用を被ることなく,極めて静的な状態で少なくとも6-12 kmの深度から減圧上昇したと考えられる.
三波川変泥質岩(UKE04N07b)
四国別子地域のエクロジャイトユニットから採取された試料.同ユニットの岩石は,エクロジャイト相累進変成作用 (1.7-1.9GPa/470-530℃) → 減圧・加水反応 → 緑れん石-角閃岩相累進変成作用 (〜1.0-1.1GPa/600-630℃) という,圧力-温度履歴を経験している (例えば,Kouketsu et al., 2014, IAR, 263-280).基質を構成する主要鉱物は,ざくろ石,黒雲母,フェンジャイト,緑れん石,曹長石,石英および石墨である.ざくろ石は組成累帯構造によって,パラゴナイトや高残留圧力(〜0.8-0.9GPa)を保持する石英を包有しエクロジャイト相で形成された内側領域(Alm67-73Sps3-10Prp4-10Grs16-21: 他の試料ではオンファス輝石を含むこともある)とそれを組成的に不連続に取り囲んで成長し,よりMnに乏しくCaに富み緑れん石-角閃岩相で形成された外側領域 (Alm56-66Sps0-10Prp4-9Grs26-36)からなる.そして,組成累帯構造の特徴から,ざくろ石は単結晶であるようにみえる.これに対し,EBSD分析からは,このざくろ石が単結晶ではなく,結晶学的方位の異なる4つの領域(各領域相互の不適合の程度は,少なくとも40°-59°)からなることが明らかとなった.一方,境界を挟んで隣同士の領域に包有される石英粒は,1°-6°の範囲内で共通する結晶学的方位を持つ例が多数観察される.なお,ざくろ石のそれぞれの領域はいずれもエクロジャイト相および緑れん石-角閃岩相変成作用での成長を示す共通の変成履歴を保持している.これらの情報から,検討したざくろ石は,次の様な過程を経て形成されたと考えられる:エクロジャイト相条件下で複数の結晶粒の集合体として成長を開始 → 集合体の周囲や境域境界に沿って部分的に加水分解 → 緑れん石-角閃岩相条件下での再成長.
Mogok変泥質岩(S22b)
ミャンマー・Mandalay北西のSagaing断層沿いの上部角閃岩相〜グラニュライト相地域から採取された試料.基質を構成する主要鉱物は,ざくろ石,黒雲母,斜長石,カリ長石,石英,イルメナイト,および石墨である.また,ざくろ石の包有物として珪線石が認められる.それらの組成共生関係から見積もられる圧力温度条件はよそ0.8GPa/800℃である (Maw Maw Win, 2014 私信).ざくろ石はより大きな粒が加水分解してできたと考えられる他形粒の集まりを形成しており,個々のざくろ石粒は組成的に均質なコア部と外側に向かってMnおよびFeが漸増しMgが漸減するマントル部からなる累帯構造を示す (Alm60-70Sps1-3Prp20-33Grs5-7).したがって,ざくろ石の加水分解は,ざくろ石内で元素拡散が進行する比較的高温条件下で起こったと考えられる.また,ざくろ石の粒界に産する黒雲母や斜長石の組成共生関係からざくろ石が加水分解した時期の圧力温度条件は,0.2-0.4GPa/580-630℃程度と見積もられる.一方,EBSDによる分析によれば,これらざくろ石粒は互いに3本の結晶軸を全て共有している(不適合の度合いは最大でも1-4°).これらの点から,今回検討した試料は,ざくろ石の明瞭な回転を生ずるような変形作用を被ることなく,極めて静的な状態で少なくとも6-12 kmの深度から減圧上昇したと考えられる.