日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM07] Space Weather, Space Climate, and VarSITI

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*片岡 龍峰(国立極地研究所)、海老原 祐輔(京都大学生存圏研究所)、三好 由純(名古屋大学太陽地球環境研究所)、清水 敏文(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、浅井 歩(京都大学宇宙総合学研究ユニット)、陣 英克(情報通信研究機構)、佐藤 達彦(日本原子力研究開発機構)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、宮原 ひろ子(武蔵野美術大学造形学部)、中村 卓司(国立極地研究所)、塩川 和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)、伊藤 公紀(横浜国立大学大学院工学研究院)

18:15 〜 19:30

[PEM07-P03] 極微小惑星間空間磁場(1nT未満)のもとでの電離圏対流強化

*岩木 美延1片岡 龍峰2渡辺 正和3藤田 茂4田中 高史3行松 彰2細川 敬祐5Adrian Grocott6 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.国立極地研究所 総合研究大学院大学、3.九州大学大学院理学研究院、4.気象庁気象大学校、5.電気通信大学大学院情報理工学研究科、6.University of Leicester)

キーワード:MHDシミュレーション, 極端宇宙天気, 電離圏、磁気圏対流

電離圏2セル対流は主に惑星間空間磁場(IMF)南北方向成分(BZ)により制御されるものとして知られている。IMFが南向きのとき、昼側の低緯度境界層におけるいわゆるDungeyのリコネクションにより、電離圏ではIMF BZの大きさに比例する2セル対流が励起される。これに対しIMF北向きのときには2セル対流は弱まり、IMF BZにはほとんど依存しない太陽風-磁気圏間の粘性相互作用が残ると理解されている。しかしMilan(2004)はやや異なる描像を得た。IMF BZの関数として極冠域対流ポテンシャル差を求めた結果、北向きに対して平均的に25kV程度の対流を見出し、対流への粘性相互作用寄与は~10kV程度であるものとし、IMF北向き時の対流は夜側リコネクションと昼側高緯度リコネクションの混合であると結論づけている。そこで我々はSuperDARNの統計データベース[Grocott et al., 2009]を用いて、特に弱い北向きIMFに対する電離圏対流の応答を系統的に調べた。その結果、IMFの絶対値が1nT未満のとき、1nT以上に比べて電離圏対流が強化される傾向を発見した。
 上述の特殊な電離圏対流の機構を解明するため、グローバルMHDシミュレーションを用いてIMF絶対値が1nT未満のIMFに対する磁気圏-電離圏対流系を再現した。電離圏対流の強化は観測と同様にみられ、その原因はIMFの弱化によって磁気圏ダイナモがかえって強化されるためだと判明した。強い北向きIMFに対しては、マグネトシースとカスプの間に磁気圧が強い領域があり、これがシースからのプラズマ侵入を防いでいる。しかし、弱い北向きIMFに対してはその領域は消失する。この強磁気圧領域の消失はカスプ圧力の上昇を促し、カスプ-マントル境界領域にJ・Eが負であるダイナモ領域の形成を促進する。そのダイナモによって沿磁力線電流は強化され電離圏対流もともに強化される。この機構による磁気圏ダイナモは、一般的描像であるダンジーサイクル[Dungey,1961]や粘性相互作用とは異なるものである。
 マウンダー極小期のような太陽活動のグランドミニマムでは惑星間空間磁場が極端に弱まると考えられる。グランドミニマムでは上述のような弱い北向きIMFが長期間継続する可能性があり、本研究は将来のグランドミニマムにおける地球磁気圏応答の予測に役立てることができる。