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[BCG28-P10] 鉄微小電極測定法の確立とBIF類似沈殿物への適用
先カンブリア時代に形成された縞状鉄鉱層(BIF)は,当時の地球環境の酸化還元状態を推定する上で重要であり,現在に至るまで多くの研究がなされている.従来のモデルでは,Fe(II)がシアノバクテリアの放出する酸素によって酸化されることでBIFが形成されたと考えられてきた.しかし近年では,酸素非発生型鉄(II)酸化光合成細菌の炭素固定に伴う直接的鉄酸化などの微生物代謝も関与していたことが示唆されており,BIFの形成過程は以前に考えられていたよりも複雑なものである可能性が高い.このことから,BIFを形成しうる微生物的過程を詳細に理解することが求められている.そこで本研究では,島根県三瓶温泉にみられる鉄沈殿物を対象とし,地球化学的・地球微生物学的手法を用いて,その形成過程を明らかにすることを目的とした.先行研究により,この沈殿物が主に水酸化鉄(フェリハイドライト)から構成されていること,沈殿物表面には鉄酸化細菌(Gallionella sp.)が多く生息すること,またシアノバクテリアは存在するものの量的重要性は低いことなどが示されている.本研究では,沈殿物表面で起きている鉄の微生物的沈殿および無機的沈殿を正確に評価するため,pH・redox・O2微小電極に加えて,Fe(II)微小電極を用いて検討を行った.これらの微小電極によって,沈殿物表面近傍(表面から約1 mm)の化学プロファイルを測定したところ,すべての測定項目において明条件・暗条件ともにほぼ同じ結果が得られ,光合成代謝の寄与は僅少であった.沈殿物表面近傍ではFe(II)およびO2が消費されていることから,鉄酸化細菌(Gallionella sp.)による酸素を利用したFe(II)の酸化が行われていることが示唆された.このような鉄沈殿過程は,シアノバクテリアの放出する酸素によって徐々に海洋が酸化的になる時代のBIF形成過程を推定する上で,重要な知見を提供するだろう.また,本研究で確立されたFe(II)微小電極測定法を,異なるタイプのBIF類似堆積物にも適用することで,BIFの形成過程に関してより詳しい事実が明らかになると期待される.