日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC03] Implementing Human Dimensios Research for the Earth' Future

2015年5月28日(木) 10:00 〜 10:45 105 (1F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、櫻井 武司(国立大学法人一橋大学経済研究所)、春山 成子(三重大学大学院生物資源学研究科共生環境学専攻)、渡辺 悌二(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、座長:氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、春山 成子(三重大学大学院生物資源学研究科共生環境学専攻)

10:15 〜 10:30

[HSC03-02] ボルネオにおける住民の生態系サービス利用を決める社会的・生態的要因

*酒井 章子1Yee Keong Choy2小泉 都3岸本 圭子4高野(竹中) 宏平5市川 昌広6鮫島 弘光7加藤 裕美8祖田 亮次9潮 雅之10西前 出11中静 透5市岡 孝朗12 (1.京都大学生態学研究センター、2.京都大学大学院経済学研究科、3.京都大学大学院農学研究科、4.東京大学大学院総合文化研究科、5.東北大学大学院生命科学研究科、6.高知大学農学部、7.京都大学東南アジア研究所、8.京都大学白眉センター、9.大阪市立大学文学部、10.龍谷大学理工学部、11.京都大学大学院地球環境学堂、12.京都大学大学院人間・環境学研究科)

キーワード:生態系サービス, ボルネオ, 熱帯林, 非木材林産物, 土地被覆

非木材林産物は、森林によって供給される重要な生態系サービスの一つであるが、その利用は、世界のいろいろな地域で減少傾向にある。森林生態系の減少や劣化などがその潜在的要因の一つだが、貨幣経済の拡大など社会・経済的要因も深く関連していると考えられる。森林の減少・劣化が住民に与える影響を評価するためには、定量的なデータを用いて、生態的要因と社会的要因を同時に検討する必要がある。
本研究では、ボルネオ島マレーシア・サラワク州における住民の非木材林産物利用の有無や頻度のばらつきがどのような要因で説明できるのかを分析した。総合地球環境学研究所プロジェクト「人間活動下の生態系ネットワークの崩壊と再生」では、サラワク州の主要河川であるバラム川・ラジャン川流域の89村において質問票調査を行い、各村16?20世帯の非木材林産物利用などを調べたほか、村の代表者から村の社会的環境や状況についての情報を得ているので、このデータを利用した。周辺の森林の状況については、すでに公開されている衛星データに基づく土地被覆図から森林の割合を算出した。
 空間的自己相関を考慮したベイズモデルを用いて分析した結果、森林が減少すると利用が減ることが、いくつかの林産物で示唆された。また、経済的な要因も重要であったが、その影響は林産物の種類によって異なっていた。例えば、経済的に豊かな世帯では狩猟動物、野生果実の利用は増えるが、薪の利用は減る。このような違いは、住民にとっての林産物の価値と関連していると考えられる。
 この研究では、林産物利用に、社会的・生態的要因双方が影響を与えていることを明らかにした。このように、生態系の改変や劣化が住民に与える影響を評価するには、社会学者、経済学者など異分野での共同研究が必要であるが、そのような試みはまだ始まったばかりである。