日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 地殻流体と地殻変動

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*小泉 尚嗣(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、梅田 浩司(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、松本 則夫(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ)、田中 秀実(東京大学大学院理学系研究科)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)

18:15 〜 19:30

[SCG61-P02] 1854年安政南海地震による愛媛県最南端(愛南町)での津波,地盤沈下,地下水位変化

*弘瀬 冬樹1中西 一郎2 (1.気象研究所、2.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:安政南海地震, 四国, 愛媛県愛南町, 地殻変動, 地形変化, 断層モデル

安政南海地震は,安政元年11月5日(1854年12月24日)に発生し,紀伊半島から九州地方にかけて震度Ⅴ,震源に近い高知・徳島などでは震度Ⅵの揺れが推定されている.この地震については『新収日本地震史料』に膨大な量の地震史料が掲載されている.特に第五巻 別巻五[東京大学地震研究所, 1987]は,安政東海地震(11月4日),安政南海地震(11月5日),豊予海峡で発生した余震(11月7日)に関する史料を集成した巻であり,総ページ数が2528ページに達する.この地震史料集では,県市町村史等の刊本については地震関連箇所を転載し,未翻刻の地震史料に関しては翻刻を行い掲載している.刊本を採用する場合,原本に戻り翻刻が正しいかどうかの校正はされていない.
本論の目的は,『新収日本地震史料 第五巻 別巻五-二』[東京大学地震研究所, 1987]に転載された1町史掲載地震記録の原文コピーを再解読し,この地震史料集に掲載された解読文と比較し,地震史料に記された安政南海地震に伴った自然現象(地震動,津波,地殻変動など)と被害を詳細に検討することにある.さらに,史料の持つ情報量を整理し,地球物理学的解析も行う.我々は,地震史料を愛媛県南端に位置する現愛南町正木地区(南宇和郡一本松町正木)の庄屋であった蕨岡家に伝わった安政南海地震に関する史料に限り,史料を再解読し,内容に関する考察と解析を行った.この庄屋の書いた私的史料の内容の正確さと情報量を評価するために,この史料を安政南海地震時に宇和郡を支配した宇和島伊達家文書中の史料7点と比較した.比較の結果,海岸地域での津波被害に関しては両文書間に矛盾はなかった.一方,蕨岡家の史料に書かれていた地震に伴った井戸の涸れや落石などは,宇和島伊達家の史料にはなかった.これは,従来行われてきた宝永,安政,昭和の南海地震に関する四国海岸地域の地震動,津波,地盤の隆起・沈降に関する調査だけでなく,内陸地域での地下水位変化,地滑り,液状化の調査も併用(海岸に沿った線的調査から内陸部を含む面的調査に拡大)することで,地震断層に関する情報量を質的に向上させる可能性を示唆する.