日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM33] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2015年5月26日(火) 11:00 〜 12:45 102A (1F)

コンビーナ:*神田 径(東京工業大学火山流体研究センター)、市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、座長:畑 真紀(東京大学地震研究所)

11:45 〜 12:00

[SEM33-10] 日本周辺の地磁気経年変化率の空間分布を表現するひとつの方法

*山崎 健一1 (1.京都大学防災研究所地震予知研究センター宮崎観測所)

キーワード:地磁気経年変化, 地域地磁気モデル, 空間分布, 球面調和関数, 主成分分析

地磁気を位置の関数としてあらわしたものは地磁気モデルと呼ばれ、特に観測点密度の高い領域だけを対象としたものは地域地磁気モデルと呼ばれている。離散的な観測点で得られた地磁気観測値から地磁気モデルを作成する操作は観測値に対する内挿とみなせるが、同時に、適当な関数系をあてはめる場合には空間的長波長成分のみを抽出するフィルタとみなすこともできる。地磁気モデル作成には、古くからさまざまな方法が用いられている [たとえば Haines, 1985]。古典的な方法は多項式による表現である。たとえば、Tazima et al. [1976, JGG] は1970年前後に国土地理院の一等磁気測量で得られた全国約100点での経年変化率を成分ごとに緯度経度の2次式で表現している。より新しいものでは、Ji et al. [2006, EPS] が国土地理院の地球電磁気連続観測記録を表現するために Spherical Cap Harmonic function Analysis (SCHA) [Haines, 1985]を用いた結果を報告している。海外では、近年 SCHA の欠点である直交性の欠落を修正したものとしてR-SCHA が提案され [Thebault et al. 2006, JGR] 、地域モデリングに応用されている。

地磁気モデルが活躍しうる場面のひとつが地殻起源地磁気変動の検出である。地殻起源地磁気変動は地磁気モデルが表現するものよりも小さな空間波長をもつと期待される。そこで、各観測点で得られる地磁気変動観測値と地磁気モデルの予測値の差として異常変動を定義すると、異常変動は地殻起源の地磁気変動を表現する、と期待できる。

地殻起源の地磁気変動の抽出を目的とする場合、既存の地磁気モデル作成方法には不満足な点がある。成分ごとに多項式をあてはめる方法では、得られた場は、電流のない領域の磁場が満たすべき非回転条件を一般には満たさない。また、何次の多項式を使うとどの程度の精度で非地殻起源の地磁気変動が表現できるのかを議論することもできない。SCHA や R-SCHA を用いた場合は、日本のように長細い領域においては必ずしも基底関数の直交性は満たされず、そのため、高次のモデルパラメータ(球面調和関数解析のガウス係数に相当するもの)は正しく決定できない。実際、Ji et al. [2006] の結果では、対象領域の縁の近くでは不自然に大きな経年変化が予測されている。

本報告では、対象領域内(たとえば日本列島)に定義域を限定した球面調和関数を主成分分析して得られる結果を基底関数とする方法を提案する。この方法では、表現される場は自動的にラプラス方程式を満たす。また SCHA 等を利用する場合と異なり、対象領域の形状が円盤状でなくても直交性が保たれ、その結果としてモデルパラメータを安定して求めることができる。さらに、全球での地磁気解析から経験的に知られているガウス係数のスペクトル則を仮定することで、打切り誤差の大きさを先験的に評価することができる。