日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21] 惑星科学

2015年5月25日(月) 11:00 〜 12:45 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:鎌田 俊一(北海道大学理学研究院)、東 真太郎(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

11:30 〜 11:45

[PPS21-35] 火星内部のレオロジー構造とその進化

*東 真太郎1片山 郁夫1 (1.広島大学)

キーワード:火星, レオロジー構造, プレートテクトニクス, リソスフェア, パイレスメカニズム, 時間進化

火星は地球と同じく主に岩石と金属から成る地球型惑星である。しかし、現在の火星には液体の水や生命は存在しない、そして地球において定常的な物質循環を支配するプレートテクトニクスが火星では働いていないことが分かっている[e.g., Solomatov and Moresi 1997]。これらのことから火星は地球と異なる進化の道を辿ってきたことが予想される。このような惑星の進化やテクトニクスを考察する際、重要な要因の一つとして、レオロジー構造が挙げられる。レオロジー構造は惑星内部の変形機構や強度を表わし、温度に強く依存するため、惑星内部に強いレオロジー層構造を形成する[e.g., Burgamann and Dresen, 2008]。このレオロジー層構造が惑星のテクトニクス、対流様式を支配し、結果として惑星の進化に大きな影響を及ぼす。本研究では、火星内部のレオロジー構造の決定と、その時間進化を考察することが目的である。
レオロジー構造は温度に敏感であるため、火星内部の温度構造を決定することが必要になる。今回は比較的浅い部分(0-100 km)に焦点を当て、熱生産(heat production)[Hahn et al., 2011]や、熱流量(heat flow)[McGovern., 2002; Ruiz et al., 2011]を用いた熱伝導方程式から、North Pole(低地)そしてSolis Planum(高地)における10億年ごとの温度構造を決定した。
この温度構造を基に、斜長石(地殻)[Rybacki and Dresen 2000; Azuma et al., 2014]と、かんらん石(マントル) [Karato and Jung, 2003; Katayama and Karato, 2008]の流動則を用いてレオロジー構造を決定した。また過去の先行研究では、火星のレオロジー構造はpower-law creepの流動則から考察されているが(e.g., Grott and Bruer, 2008)、比較的温度が低く、応力の高い領域(<1000°C, >~400 MPa)では、Peierls mechanismが岩石のレオロジーを支配することが指摘されている(Tsenn and Carter, 1987)。本研究では、power-law creepだけでなく、このPeierls mechanism とdiffusion creepも考慮し、より正確なレオロジー構造の決定を試みた。このレオロジー構造から、火星におけるそれぞれの時代のリソスフェアの強度、厚さ、そしてelastic thicknessの評価も行った。
計算されたレオロジー構造において、火星のモホ付近ではpower-law creepではなくPeierls mechanismが支配的であることがわかった。これはpower-law creepで予測された火星のリソスフェアの強度は過大評価されている可能性を示す。そして、どの時代においてもドライな条件よりウェットな条件のほうが、惑星のリソスフェアの厚さは薄く、強度が低くなることがわかった。さらにドライな条件とウェットな条件ではリソスフェアの発達の速さに大きな差が生まれる可能性が示された。これは水が豊富に存在する惑星では、ドライな惑星と比べて、内部の対流様式の進化が遅くなる可能性がある。過去のリソスフェアの強度に関しては、4Gaから3Gaのウェットな条件で、火星はプレートテクトニクスの開始に必要不可欠なプレート境界を形成できるポテンシャルを持っていたことが示された(200-300 MPa)。