日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS25] 強震動・地震災害

2015年5月25日(月) 16:15 〜 18:00 A04 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*元木 健太郎(小堀鐸二研究所)、座長:津野 靖士(東京工業大学大学院総合理工学研究科)、元木 健太郎(小堀鐸二研究所)

17:15 〜 17:18

[SSS25-P01] 震度分布からみた明治三陸地震津波の強震動の特徴

ポスター講演3分口頭発表枠

*相澤 幸治1 (1.気象庁地震火山部管理課)

キーワード:震度, 長周期地震動, 津波地震, 強震動

明治29年(1896年)6月15日に発生した明治三陸地震津波は、表面波などの地震動の大きさから推定される地震の規模に比べ津波の規模が大きい「津波地震」であると考えられている(Kanamori,1972;阿部,1989)。
 明治三陸地震津波の震度分布は2つの報告がある。中央気象台(1896)の等震度分布図では、東北北部を中心に弱震、関東南部から北海道にかけての広い範囲を微震としている。大森(1901)は、等震度線と観測した震度とを示し、等震度線は弱震部と微震部に分けて中央気象台(1896)と同様の分布を示しているが、弱震部に強震が報告された地点を示している。今回、気象庁本庁に保管されている地震調査原簿に記載されている地点の震度と大森(1901)の図中の地点の震度を対照すると、数点の相違を除き同じことが分かった。このため大森(1901)を基本として、観測された震度階の分布について検討を行った。東北地方北部では、北上山地では微震が、北上河谷帯、小川原低地および脊梁山地西側に弱震、強震の地点が多い。震度は震源からの距離による減衰が明瞭ではない。また、震度分布と深部地盤の一次固有周期(中央防災会議、2008;横田ほか、2010)を重ね合わせると、強または弱を観測した地点は深部地盤構造の一次固有周期が2~3秒以上の地域に分布し、微の地点は1~2秒以下の地域に多い。
 地震調査原簿や大森(1901)は、明治三陸地震津波の揺れの性質について「緩慢」「緩」と表現している。野田ほか(2000)は、人間は、振動の様子について、周期1.5秒以上の揺れについては「ゆっくり」と表現するとしている。このため、明治三陸地震津波は少なくとも周期1.5秒以上の周期成分が卓越していたと考えられる。東北地方北部で震度階が大きな地点は平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震における長周期地震動階級(相澤ほか、2014)が相対に大きい地点と類似する。このため、長周期地震動階級の計算に用いる絶対速度応答スペクトルについて、渡辺(1998)の震央位置を用い、Dhakal(2013)、気象庁(2014)の手法を用いて、マグニチュードを変化させ、周期毎に距離減衰特性を調べた。その結果、マグニチュードが7.6以上、周期5秒以上場合に、絶対速度応答スペクトルと震度階の距離減衰の特徴が近いことが分かった。平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の強震波形を周期5秒でカットオフして計測震度を計算すると、東北地方北部では概ね震度2から3となり、北上山地に比べて脊梁山地西側で震度が大きくなる。
 以上の結果から、明治三陸地震津波における震度は、観測された地震動の性質と合わせ、周期5秒程度以上の長周期地震動による体感を示していると考えられる。