18:15 〜 19:30
[SGL40-P04] 西南日本,秩父~四万十帯下部白亜系の砕屑性ジルコンU-Pb年代分布
キーワード:ウラン-鉛年代, 砕屑性ジルコン, レーザー誘導結合プラズマ質量分析計, 西南日本, 下部白亜系
はじめに 日本列島には,白亜紀の火成活動や構造運動の痕跡が数多く残され,様々な環境で堆積した白亜系が広く分布する.日本列島の構造発達史解読の一助とすべく,秩父累帯~四万十帯の下部白亜系砂岩14試料について,砕屑性ジルコンのウラン-鉛年代分布から後背地の解析を試みた.
試 料 測定砂岩14試料は以下のとおりである.
北部秩父帯:山中白亜系瀬林層(01;アプチアン)・三山層(02;アルビアン),伊平層(03;バレミアン),物部川層群領石層(04;オーテリビアン-バレミアン)・物部層(05;バレミアン)・柚ノ木層(06;アプチアン-アルビアン)・日比原層(07;アルビアン),佩楯山層(08;バレミアン)
黒瀬川帯:南海層群美良布層(09;オーテリビアン-バレミアン)・船谷層(10;時代未詳)・萩野層(11;アプチアン),山部層(12;ベリアシアン-オーテリビアン?)
南部秩父帯:鳥巣層群(13;ティソニアン-ベリアシアン)
四万十帯:堂ヶ奈路層(14;アプチアン-アルビアン)
結 果 名古屋大学大学院環境学研究科設置のLA-ICP-MS でU-Pb 年代を測定した.
パターンI:前期白亜紀ジルコンが卓越する(70 %). 02と07がこれにあたる.
パターンII:ジュラ紀ジルコンが卓越し(40 %以上),前期白亜紀ジルコンを含む(15 %). 01,05,06, 09,11がこれにあたる.
パターンIII:三畳紀~ペルム紀ジルコンが卓越する(70 %).03,04,08がこれにあたる.
パターンIV:パターンI ~III以外の総称である.各試料の年代分布は付図に示す.
東アジアの火成岩の年代分布:中国とその周辺地域の火成岩類の年代分布は,ペルム紀火成岩類が中国南部の海南省~マレー半島及び舞鶴~秋吉帯に,三畳紀火成岩類が広東省西部,湖南省,中国東北部,韓半島,及び飛騨帯~飛騨外縁帯に,ジュラ紀火成岩類が主に広東省北東~東部,中国東北部,及び韓半島とにそれぞれ分布する.また,前期白亜紀火成岩類のうち,140-120 Maは広東省の一部,安徽省~浙江省,及び北上山地に,120-110 Maは浙江省と北上山地に,110-90 Maは浙江省~福建省~広東省の沿岸部,阿武隈帯,及び肥後~領家帯の一部にそれぞれ分布する.古原生代の火成岩類は,韓半島や北中国に広く分布する一方で,南中国での分布は狭い.
砂岩の後背地推定 パターンIII以外に含まれるジュラ紀ジルコンの供給源は,韓半島及び広東省が候補に挙がる.しかし韓半島には火成活動静穏期(158-110 Ma;Sagong et al., 2005 Tectonics)が知られているため,この時期のジルコンを含む秩父累帯下部白亜系が韓半島付近で堆積したとは考えにくい.パターンI は,前期白亜紀(120-110 Ma前後)ジルコンが卓越する浙江省付近を,パターンII は,ジュラ紀ジルコンが卓越し,前期白亜紀(130-120 Ma)ジルコンを含む広東省~福建省付近をそれぞれ後背地とした蓋然性が高い.10と12は,ジュラ紀~ペルム紀のジルコンを持つことから,広東省~海南省が後背地と見られるが,14は120-110 Maのジルコンを含むため浙江省付近と思われる.また.13はジュラ紀ジルコンが卓越するため広東省が後背地と考えられるが,古原生代ジルコンも卓越するので(48 %)韓半島の可能性も否定できない.一方で,パターンIII はペルム紀ジルコン(240-270 Ma)を多量に含むが,この区域でペルム紀火成岩類のみが広く分布する地域は見られない.また,領石層(04)に関して,1)物部川層群は北部秩父帯ペルム紀付加体を不整合で覆い(山北,1998地質雑)北部秩父帯付加体から礫の供給を受ける(松川・恒岡,1993地質学論集),2)同付加体は,ペルム紀砕屑性ジルコンを多量に含む(森田ほか,2012 JpGU)という事実から,パターンIIIのペルム紀ジルコンは,北部秩父帯ペルム系に由来すると考えた.さらに,伊平層(03)は122 Maのジルコンを2粒含むため,この値を示す火成岩類分布域の浙江省付近に北部秩父帯付加体が位置しジルコンを供給したと見ている.以上より,これら秩父累帯~四万十帯下部白亜系の後背地は中国南部と考えられ,中国北東部を後背地とする西南日本内帯手取層群(川越ほか,2014 JpGU)よりも南方で堆積したと推定される.従来,西南日本内帯及び外帯は,北中国~中国東北部(手取型植物区)及び南中国~マレー半島(領石型植物区)の植物区にそれぞれ属し(大花・木村,1995地質雑),中央構造線の左横すべり運動により並置されたとする考えがあるが,砕屑性ジルコンの後背地解析もその考えを支持する.
試 料 測定砂岩14試料は以下のとおりである.
北部秩父帯:山中白亜系瀬林層(01;アプチアン)・三山層(02;アルビアン),伊平層(03;バレミアン),物部川層群領石層(04;オーテリビアン-バレミアン)・物部層(05;バレミアン)・柚ノ木層(06;アプチアン-アルビアン)・日比原層(07;アルビアン),佩楯山層(08;バレミアン)
黒瀬川帯:南海層群美良布層(09;オーテリビアン-バレミアン)・船谷層(10;時代未詳)・萩野層(11;アプチアン),山部層(12;ベリアシアン-オーテリビアン?)
南部秩父帯:鳥巣層群(13;ティソニアン-ベリアシアン)
四万十帯:堂ヶ奈路層(14;アプチアン-アルビアン)
結 果 名古屋大学大学院環境学研究科設置のLA-ICP-MS でU-Pb 年代を測定した.
パターンI:前期白亜紀ジルコンが卓越する(70 %). 02と07がこれにあたる.
パターンII:ジュラ紀ジルコンが卓越し(40 %以上),前期白亜紀ジルコンを含む(15 %). 01,05,06, 09,11がこれにあたる.
パターンIII:三畳紀~ペルム紀ジルコンが卓越する(70 %).03,04,08がこれにあたる.
パターンIV:パターンI ~III以外の総称である.各試料の年代分布は付図に示す.
東アジアの火成岩の年代分布:中国とその周辺地域の火成岩類の年代分布は,ペルム紀火成岩類が中国南部の海南省~マレー半島及び舞鶴~秋吉帯に,三畳紀火成岩類が広東省西部,湖南省,中国東北部,韓半島,及び飛騨帯~飛騨外縁帯に,ジュラ紀火成岩類が主に広東省北東~東部,中国東北部,及び韓半島とにそれぞれ分布する.また,前期白亜紀火成岩類のうち,140-120 Maは広東省の一部,安徽省~浙江省,及び北上山地に,120-110 Maは浙江省と北上山地に,110-90 Maは浙江省~福建省~広東省の沿岸部,阿武隈帯,及び肥後~領家帯の一部にそれぞれ分布する.古原生代の火成岩類は,韓半島や北中国に広く分布する一方で,南中国での分布は狭い.
砂岩の後背地推定 パターンIII以外に含まれるジュラ紀ジルコンの供給源は,韓半島及び広東省が候補に挙がる.しかし韓半島には火成活動静穏期(158-110 Ma;Sagong et al., 2005 Tectonics)が知られているため,この時期のジルコンを含む秩父累帯下部白亜系が韓半島付近で堆積したとは考えにくい.パターンI は,前期白亜紀(120-110 Ma前後)ジルコンが卓越する浙江省付近を,パターンII は,ジュラ紀ジルコンが卓越し,前期白亜紀(130-120 Ma)ジルコンを含む広東省~福建省付近をそれぞれ後背地とした蓋然性が高い.10と12は,ジュラ紀~ペルム紀のジルコンを持つことから,広東省~海南省が後背地と見られるが,14は120-110 Maのジルコンを含むため浙江省付近と思われる.また.13はジュラ紀ジルコンが卓越するため広東省が後背地と考えられるが,古原生代ジルコンも卓越するので(48 %)韓半島の可能性も否定できない.一方で,パターンIII はペルム紀ジルコン(240-270 Ma)を多量に含むが,この区域でペルム紀火成岩類のみが広く分布する地域は見られない.また,領石層(04)に関して,1)物部川層群は北部秩父帯ペルム紀付加体を不整合で覆い(山北,1998地質雑)北部秩父帯付加体から礫の供給を受ける(松川・恒岡,1993地質学論集),2)同付加体は,ペルム紀砕屑性ジルコンを多量に含む(森田ほか,2012 JpGU)という事実から,パターンIIIのペルム紀ジルコンは,北部秩父帯ペルム系に由来すると考えた.さらに,伊平層(03)は122 Maのジルコンを2粒含むため,この値を示す火成岩類分布域の浙江省付近に北部秩父帯付加体が位置しジルコンを供給したと見ている.以上より,これら秩父累帯~四万十帯下部白亜系の後背地は中国南部と考えられ,中国北東部を後背地とする西南日本内帯手取層群(川越ほか,2014 JpGU)よりも南方で堆積したと推定される.従来,西南日本内帯及び外帯は,北中国~中国東北部(手取型植物区)及び南中国~マレー半島(領石型植物区)の植物区にそれぞれ属し(大花・木村,1995地質雑),中央構造線の左横すべり運動により並置されたとする考えがあるが,砕屑性ジルコンの後背地解析もその考えを支持する.