日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM34] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2015年5月24日(日) 11:00 〜 12:45 102A (1F)

コンビーナ:*望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)、松島 政貴(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、座長:佐藤 雅彦(九州大学地球変動講座)、齋藤 武士(信州大学理学部地質科学科)

12:30 〜 12:45

[SEM34-10] 非晶質シリケートの磁気異方性

*植田 千秋1 (1.大阪大学大学院理学研究科)

キーワード:磁気異方性, ダスト整列, 微小重力, 回転振動, 磁場配向, 非晶質シリカ

星間の磁場方向を観測で推定する手段として,ダスト整列による偏光が広く用いられ,それらは惑星形成に関する理論的な考察にも寄与してきた.しかし星間ダストは主として非晶質シリカであるため,従来の物理的理解では整列が定量的に説明できない状況にある.従って,非晶質シリカの実効的な磁気異方性の有無を,実験的に検証する意義があると考えられる.近年, 天然の非晶質シリカ(テクタイト)の表面近傍で,不純物のFeイオンに由来する局所的な磁気異方性が検出された[1].本研究ではこの異方性の一般性を検証するため,生成条件が制御された合成試料について,表面から内部方向に,異方性の線分析を実施した.即ちはじめに非晶質シリカ試料を表面から内部方向に向かって薄片(1.0x0.7x0.08mm) に分割した(薄片面はbulk試料表面に平行).その上で個々の薄片ごとに微小重力空間に開放し,静磁場(0.6T)に対する薄片の回転振動の周期から異方性を決定した[1].その結果,合成試料でもテクタイトと同様に表面近傍で局部的に大きい異方性が確認された.先行研究と同様、試料表面に垂直な方向が,常に磁気的不安定軸であった.同時に上記の薄片に関して,電子スピン共鳴によるg値の異方性を検出し,シリカ内に孤立した鉄イオンの結晶場異方性が,回転振動で得た磁化率の異方性と矛盾しないことを確認した.
  本研究でシリカ表面の法線方向が磁気的不安定軸になることが確認されたが,これにより非晶質粒子の磁気的主軸は(異方性が孤立イオン起源であるにもかかわらず),一般に粒子の形状で制御できる事になる.例えばロッド状粒子の場合,法線が磁気的不安定である異方性を,微小表面に配置し全表面について積算すると,粒子全体ではロッド長軸が常に安定軸となる.その対極として球状の粒子の場合,全表面について積算した値はゼロとなる.このように非晶質表面で見出された異方性は,新しいタイプの粒子磁場配向の研究につながると期待される。
 今後は,シリカ生成時の冷却条件,あるいは磁性イオンの差異による上記profileの変動を測定し,異方性が発生する条件を原子レベルで明確にする.これにより星間ダストの整列機構についての考察も進展すると期待される.
[1] Yokoi et al :Planetary & Space Sci.(2014).