日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM27] 大気圏・電離圏

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 A01 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)、座長:柿並 義宏(高知工科大学システム工学群)、冨川 喜弘(国立極地研究所)

09:15 〜 09:30

[PEM27-05] ノルウェー・トロムソでオーロラ擾乱時に観測されたスポラディックナトリウム層の生成機構の研究

*高橋 透1野澤 悟徳1津田 卓雄2小川 泰信3斎藤 徳人4秀森 丈寛1川原 琢也5Chris Hall6藤原 均7Asgeir Brekke8堤 雅基3和田 智之4川端 哲也1大山 伸一郎1藤井 良一1 (1.名古屋大学太陽地球環境研究所、2.電気通信大学、3.国立極地研究所、4.理化学研究所、5.信州大学工学部、6.トロムソ大学TGO、7.成蹊大学理工学部、8.トロムソ大学理学部)

キーワード:スポラディックナトリウム層, ナトリウムライダー, 極域, オーロラ, 中間圏・下部熱圏

極域ではスポラディックナトリウム層(SSL)の生成に荷電粒子と中性粒子の相互作用が大きく寄与していると考えられており、磁気圏-電離圏-熱圏結合を理解する上で、極域におけるSSLの生成機構の理解は非常に重要である。これまで35年にわたるSSLの観測研究で、スポラディックE(Es)層、背景大気温度変化による化学反応の促進、大気重力波によるナトリウム原子の下方輸送、流星による直接のナトリウム原子の供給、オーロラ降下粒子による叩き出しなどの様々な生成メカニズムが提唱されている。しかし、SSLの生成機構に関するこれらの研究は定性的な議論が先行しており、定量的な研究は少ない。SSLの生成機構の理解のためには、これまで提唱された生成機構の観測的証拠が求められている。本研究ではノルウェー・トロムソでオーロラ擾乱時に観測されたSSLの生成機構について、ナトリウムライダー、EISCATレーダー、流星レーダーの観測データに基づき調査を行った。
 オーロラ活動が活発であった、2012年1月22日にナトリウムライダーによってSSLが観測された。SSLは21:18 UTから18分間存在し、最大ナトリウム密度およびその高度は、1.9×1010 m-3、93 kmであった。20:00-23:00 UTにおいて、EISCAT UHFレーダーによってEs層が観測された。Es層はSSL発生時間帯にSSLと同じ高度に位置していたため、Es層がSSLの生成に寄与した可能性がある。しかし、Es層内に存在するナトリウムイオン密度の最大値を見積り、そのナトリウムイオンがすべてナトリウム原子に変換されたと仮定しても、SSLのナトリウム密度の21%にしか満たないことが明らかになった。一方、EISCAT UHFレーダーで観測された電場の向きは20:00 UT-21:10 UT、荷電粒子を下方に加速させる向きであった。そこでナトリウム層上部に存在するナトリウムイオン層の密度高度分布として先行研究で提唱された値を用い、電場による下方輸送と化学反応によるナトリウム原子の生成・消滅の効果を観測データに基づく数値解析から見積もった。その際に、ナトリウム層上部に存在するナトリウムイオン層の密度高度分布として、先行研究で提唱された値を用いた。その結果、本事例では、SSLのナトリウム密度の88%を説明できることが分かった。これらのことから、SSLの主要なソースはナトリウムイオン層であること、ほぼ南西向きの強い電場がSSLの生成に支配的な役割を果たしたことを観測データに基づいて示した。