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[SCG65-04] 地震長期評価の問題点:兵庫県南部地震の教訓は活かされているか?
キーワード:地震長期評価, 地震動予測地図, 南海トラフ地震, 時間予測モデル, 兵庫県南部地震
1995年に兵庫県南部地震が発生した際、関西における大地震発生の危険性は住民に十分に認知されておらず、防災対策も不十分で大きな災害を引き起こす一因となった。こうした反省から、地震調査研究推進本部では日本列島における地震活動の長期評価や地震動予測地図の作成を進めてきた。2014年12月に公表された最新版の全国地震動予測地図では、関東から四国にかけての太平洋沿岸が今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が最も高い(26%以上)ことを示す濃い赤色で示されている。
このように高い確率で大きな地震動が予測されている要因の一つは南海トラフ地震の30年確率70%程度という見積りである。この長期評価には時間予測モデルを使用した結果であるが、他の長期評価と同様に時間予測モデルを使用せず平均的な地震発生間隔を用いると、30年確率は20-30%程度にしかならない。1707年宝永地震以前の南海トラフ地震の発生の時系列に不確定な部分があり、そもそも時間予測モデルは科学的に十分検証されたとは言い難く、室戸岬の隆起量を地震規模の指標として用いることの妥当性にも大いに疑問が残る。こうした事情を考えると、70%という発生確率は、科学的な推定の範囲内ではあるが、その上限として捉えるべきであろう。
こうした極端な確率値を採用することにより、地震動予測地図は地域的にバイアスを持っており、公平な地震ハザードの地域比較となっていない。地震動予測地図の用途には防災予算の個所付けや地震保険の料率算定等があるが、こうした目的で使うには、現在の地震動予測地図は不適切と言わざるを得ない。さらに、南海トラフという特定の地域の地震危険度を実際以上に強調することは、東海地震の危険をことさらに強調して他の地域が置き去りにされた兵庫県南部地震前の状況にも通じる。特定の地域の危険で国民を煽ることは必ずしも真の防災につながらない。そうした危険が日本列島のどこにでもあること、科学的な予測や評価は現状では非常に不確かなものであることを正しく伝えていく必要があり、兵庫県南部地震の教訓を活かすことにつながる。
このように高い確率で大きな地震動が予測されている要因の一つは南海トラフ地震の30年確率70%程度という見積りである。この長期評価には時間予測モデルを使用した結果であるが、他の長期評価と同様に時間予測モデルを使用せず平均的な地震発生間隔を用いると、30年確率は20-30%程度にしかならない。1707年宝永地震以前の南海トラフ地震の発生の時系列に不確定な部分があり、そもそも時間予測モデルは科学的に十分検証されたとは言い難く、室戸岬の隆起量を地震規模の指標として用いることの妥当性にも大いに疑問が残る。こうした事情を考えると、70%という発生確率は、科学的な推定の範囲内ではあるが、その上限として捉えるべきであろう。
こうした極端な確率値を採用することにより、地震動予測地図は地域的にバイアスを持っており、公平な地震ハザードの地域比較となっていない。地震動予測地図の用途には防災予算の個所付けや地震保険の料率算定等があるが、こうした目的で使うには、現在の地震動予測地図は不適切と言わざるを得ない。さらに、南海トラフという特定の地域の地震危険度を実際以上に強調することは、東海地震の危険をことさらに強調して他の地域が置き去りにされた兵庫県南部地震前の状況にも通じる。特定の地域の危険で国民を煽ることは必ずしも真の防災につながらない。そうした危険が日本列島のどこにでもあること、科学的な予測や評価は現状では非常に不確かなものであることを正しく伝えていく必要があり、兵庫県南部地震の教訓を活かすことにつながる。