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[BPT24-02] 四万十帯漸新統‐中新統のメタン湧水:深海泥底環境におけるメタン湧水の形成過程
日本からは数多くのメタン湧水性の化学合成化石群集の報告がなされているが(Majima et al., 2005),湧水堆積物や化学合成化石群集の形成過程を含めた海底下断面の復元を行った研究例は少ない(Shibasaki and Majima, 1997; Tate and Majima, 1998; 延原ほか, 2008; Utsunomiya et al., 2015).特に化学合成群集の主要構成分類群であるシロウリガイ類が出現した新生代以降の深海泥底環境におけるメタン湧水の海底下断面の研究例はほとんどない.本研究では,付加体堆積物である高知県四万十体南部の日沖コンプレクス中から報告された漸新統~中新統(平ほか,1980)のシロウリガイ類群集(Matsumoto and Hirata, 1972)を産する岩体と岩体中の大型化石群集を対象に,その形成過程の復元を試みた.
岩体下部は泥岩と炭酸塩岩が混在し, 炭酸塩岩はマイクロスパーライトから成る. 中部から上部には泥岩がほぼなく,ほとんどが炭酸塩岩である. 上部はミクライト, 放射状カルサイト, マイクロスパーライト, スパーライトが入り乱れた構造(ここではカオティック構造と呼ぶ)が見られる.各炭酸塩鉱物組織の晶出順序はミクライト,放射状カルサイト,マイクロスパー,スパーライトの順であった.炭酸塩鉱物の炭素同位体比は-38.5~-10.6‰(vs. VPDB)であった. 大型化石は上部から産出し,ほとんどがシロウリガイ類,キヌタレガイ類,ハナシガイ類,ツキガイ類といった化学合成細菌を共生させた二枚貝類に分類された.岩体に貝化石が密集していること,現生・地質時代のメタン湧水堆積物で頻繁に見られるカオティック構造があること,炭酸塩鉱物の低い炭素同位体比, 化学合成二枚貝類が豊富に産出すること岩体はメタン湧水性炭酸塩岩であることが明らかである.さらに, 観測事実から岩体の形成過程を以下の通りに復元した. ①メタン湧水活動がはじまり,それに伴う炭酸イオン・硫化水素が発生しはじめた. 海底面には硫化水素を利用するシロウリガイ類をはじめとした化学合成群集の形成がはじまった.②メタンの湧出量増加に伴って炭酸イオンの供給量が増加し,海底面直下~2mではミクライトが晶出した.ミクライトは未固結状態の時に湧水やガスによって変形・破壊を受け, カオティック構造が形成された. 次いで放射状カルサイトがミクライトを縁取るように晶出し固結した.③メタン湧水の湧出が弱まり炭酸イオン供給量が低下,岩体全体にマイクロスパーが沈殿した. ④残された間隙にスパーが晶出した.
岩体下部は泥岩と炭酸塩岩が混在し, 炭酸塩岩はマイクロスパーライトから成る. 中部から上部には泥岩がほぼなく,ほとんどが炭酸塩岩である. 上部はミクライト, 放射状カルサイト, マイクロスパーライト, スパーライトが入り乱れた構造(ここではカオティック構造と呼ぶ)が見られる.各炭酸塩鉱物組織の晶出順序はミクライト,放射状カルサイト,マイクロスパー,スパーライトの順であった.炭酸塩鉱物の炭素同位体比は-38.5~-10.6‰(vs. VPDB)であった. 大型化石は上部から産出し,ほとんどがシロウリガイ類,キヌタレガイ類,ハナシガイ類,ツキガイ類といった化学合成細菌を共生させた二枚貝類に分類された.岩体に貝化石が密集していること,現生・地質時代のメタン湧水堆積物で頻繁に見られるカオティック構造があること,炭酸塩鉱物の低い炭素同位体比, 化学合成二枚貝類が豊富に産出すること岩体はメタン湧水性炭酸塩岩であることが明らかである.さらに, 観測事実から岩体の形成過程を以下の通りに復元した. ①メタン湧水活動がはじまり,それに伴う炭酸イオン・硫化水素が発生しはじめた. 海底面には硫化水素を利用するシロウリガイ類をはじめとした化学合成群集の形成がはじまった.②メタンの湧出量増加に伴って炭酸イオンの供給量が増加し,海底面直下~2mではミクライトが晶出した.ミクライトは未固結状態の時に湧水やガスによって変形・破壊を受け, カオティック構造が形成された. 次いで放射状カルサイトがミクライトを縁取るように晶出し固結した.③メタン湧水の湧出が弱まり炭酸イオン供給量が低下,岩体全体にマイクロスパーが沈殿した. ④残された間隙にスパーが晶出した.