日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS28] 東アジア‐北西太平洋域高解像度古気候観測網

2015年5月27日(水) 11:00 〜 12:45 202 (2F)

コンビーナ:*多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、中川 毅(立命館大学)、池原 研(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、山本 正伸(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、座長:長島 佳菜(海洋研究開発機構 地球環境観測研究開発センター)

11:35 〜 11:50

[MIS28-03] 放散虫群集に基づく日本海の表層水温分布と完新世変動の復元

*板木 拓也1本山 功2山田 安美3松崎 賢史1池原 研1多田 隆治4 (1.産業技術総合研究所 地質情報研究部門、2.山形大学理学部地球環境学科、3.マリンワークジャパン、4.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:古水温, 微化石, 古海洋学, 極前線

対馬海流は,完新世の日本海に流入する唯一の外洋水の起源として,対馬海峡を介して熱,塩分,栄養塩を東シナ海から運び込み,この海の生物相や気候に大きな影響を与えている.また,極前線が北緯40度付近に存在し,日本海北西部では冬季モンスーンに伴う表層水の冷却で深層水が形成される.そのため,日本海の海洋循環を正確に理解するためには,表層水温の分布を明らかにすることは非常に重要である.日本海における完新世の表層水温は,これまで珪藻群集(Koizumi, 2006),有孔虫群集(Lee et al., 2010),アルケノン分析(Bae et al., 2014)により見積もられている.しかし,詳細な水温分布を得るには研究例がまだ少なく,また手法によって異なる結果が得られるなど,更なる議論が必要な状況である.珪酸塩の骨格を持つ放散虫は,日本海の深海堆積物から化石として豊富に産出し(e.g., Itaki et al., 2004; 2007),水塊に対応した深度分布(Itaki, 2003; Ishitani and Takahashi, 2007; Itaki et al., 2010)および地理分布(Motoyama et al., submitted)を示すことから,古海洋環境の指標としても有効である.本研究では,日本海の69地点から採取された表層堆積物中の放散虫群集(Motoyama et al., submitted)をWorld Ocean Atlas 2013(WOA13)の水温データと比較することで群集と表層水温との関係式を構築し,これを日本海各地から採取された20本以上のコアの放散虫群集データに適用して完新世における古水温復元を試みた.その結果,極前線より南では12.5 kaから8 kaにかけて急激に表層水温が上昇し,それ以降は周期的な変動が認められた.一方,極前線の北は完新世を通して対馬海流の影響が非常に少なく常に寒冷な環境にあった.