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[SMP44-P02] メルト包有物解析による地熱資源深度の評価:宮城県白沢カルデラの例
キーワード:メルト包有物, 白沢カルデラ
地熱発電は日本において資源量が豊富なことが長所であるが調査から稼働までに期間を要することが課題である。資源量の分布調査には容積法、より狭い地域での貯留層評価等が用いられる。それら方法の一つとして熱資源・地下水に関する評価のため、噴出前のマグマ組成を残す結晶中のメルト包有物解析による評価法を提案したい。本研究では地熱探査の未探査地域を対象に噴出物中の石英結晶に含まれるメルト包有物を解析することでマグマの温度・圧力を決定し、そのデータを用いた地熱資源評価方法の開発を行うことを目的とする。
仙台市西方に位置する白沢カルデラは鮮新世後期に噴出、カルデラ中心は古仙台湖に堆積した白沢層に覆われる。地震波探査によりカルデラ地下2~5 kmに高温領域(低速度域)が地震波探査によって確かめられている。[1]
試料は白沢カルデラ北端から4試料、中心から南側にかけて8試料を採取した。岩相は凝灰質砂岩、凝灰角礫岩、軽石凝灰岩に分類される。
噴出物から石英結晶をピックアップし、樹脂で固化したものを研磨し薄片とした。EPMAを用いてSi, Ti, Al, Fe, Mn, Mg, Ca, Na, K,Pの10元素を定量分析した。北側3試料は石英が微量・微小のため分析を行うことができなかった。
EPMAによって石英に含まれるメルト組成を分析し、ノルム計算により石英(Qtz)・曹長石(Ab)・カリ長石(Or)の割合を推定した(Fig.1)。マグマが冷却される際の圧力によって共融線の位置が変化するため、Qtz-Ab-Orダイアグラム上のプロットと共融線[2]から晶出した圧力を決定した。
カルデラ中央-南側から8試料を採取し解析した結果、試料の殆どは低アルカリソレアイト質流紋岩、カルデラ北端の1試料(09)は高アルカリソレアイト質流紋岩に分類された。メルト包有物44点を計測して求めた鉱物割合はQtz:30~43 %, Ab:35~52 %, Or:9~26 %であり、一部を除きほぼ直線上にプロットされる。晶出圧力は0.1~320 MPaであり、その多くは30~50 MPaに集中する。一部試料(2305)の圧力は5~320 MPaにプロットされ石英中のメルト包有物はAb-Qtz相図の共融点の組成を保ったまま上昇したと考えられる。流紋岩質マグマ密度を2.0 g/cm3とすると深度は地下16~1.5 kmと見積もられる。マグマは地下約16 kmから上昇、1.5~2.5 kmで平衡状態になり、その後噴出したと推測される。その他の試料においても晶出は同程度の深度を示す。結晶成長に伴い揮発成分濃集により圧力上昇、噴出したと考えられる。地震波探査による高温領域深度と圧力から求められたマグマ深度は矛盾しない。またOrに富む試料は採取地点から他マグマ溜まり由来のものであると考えられる。
本研究ではこれらのデータから地下のマグマ溜まりの温度について議論する。
[1] Sato et al. (2002) Earth Planets Space, 54,1039-1043.
[2] Blundy .and Chashman (2001) Contrib.Mineral.Petrol,54,631-350.
仙台市西方に位置する白沢カルデラは鮮新世後期に噴出、カルデラ中心は古仙台湖に堆積した白沢層に覆われる。地震波探査によりカルデラ地下2~5 kmに高温領域(低速度域)が地震波探査によって確かめられている。[1]
試料は白沢カルデラ北端から4試料、中心から南側にかけて8試料を採取した。岩相は凝灰質砂岩、凝灰角礫岩、軽石凝灰岩に分類される。
噴出物から石英結晶をピックアップし、樹脂で固化したものを研磨し薄片とした。EPMAを用いてSi, Ti, Al, Fe, Mn, Mg, Ca, Na, K,Pの10元素を定量分析した。北側3試料は石英が微量・微小のため分析を行うことができなかった。
EPMAによって石英に含まれるメルト組成を分析し、ノルム計算により石英(Qtz)・曹長石(Ab)・カリ長石(Or)の割合を推定した(Fig.1)。マグマが冷却される際の圧力によって共融線の位置が変化するため、Qtz-Ab-Orダイアグラム上のプロットと共融線[2]から晶出した圧力を決定した。
カルデラ中央-南側から8試料を採取し解析した結果、試料の殆どは低アルカリソレアイト質流紋岩、カルデラ北端の1試料(09)は高アルカリソレアイト質流紋岩に分類された。メルト包有物44点を計測して求めた鉱物割合はQtz:30~43 %, Ab:35~52 %, Or:9~26 %であり、一部を除きほぼ直線上にプロットされる。晶出圧力は0.1~320 MPaであり、その多くは30~50 MPaに集中する。一部試料(2305)の圧力は5~320 MPaにプロットされ石英中のメルト包有物はAb-Qtz相図の共融点の組成を保ったまま上昇したと考えられる。流紋岩質マグマ密度を2.0 g/cm3とすると深度は地下16~1.5 kmと見積もられる。マグマは地下約16 kmから上昇、1.5~2.5 kmで平衡状態になり、その後噴出したと推測される。その他の試料においても晶出は同程度の深度を示す。結晶成長に伴い揮発成分濃集により圧力上昇、噴出したと考えられる。地震波探査による高温領域深度と圧力から求められたマグマ深度は矛盾しない。またOrに富む試料は採取地点から他マグマ溜まり由来のものであると考えられる。
本研究ではこれらのデータから地下のマグマ溜まりの温度について議論する。
[1] Sato et al. (2002) Earth Planets Space, 54,1039-1043.
[2] Blundy .and Chashman (2001) Contrib.Mineral.Petrol,54,631-350.