日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS46] 海底マンガン鉱床の生成・環境・起源

2015年5月27日(水) 09:30 〜 10:45 A05 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*臼井 朗(高知大学自然科学系理学部門)、高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、伊藤 孝(茨城大学教育学部)、鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)、座長:臼井 朗(高知大学自然科学系理学部門)、伊藤 孝(茨城大学教育学部)、鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・海底資源研究開発センター)

10:15 〜 10:30

[MIS46-04] 北西太平洋に分布するマンガンクラストの古地磁気学的研究

*野口 敦史1山本 裕二2西 圭介3臼井 朗4 (1.高知大学大学院総合人間自然科学研究科、2.高知大学 海洋コア総合研究センター、3.高知大学大学院総合人間自然科学研究科、4.高知大学理学部門)

キーワード:マンガンクラスト, 古地磁気極性, 成長速度

マンガンクラストには数千万年にわたる海洋環境の記録が残されており、正確な形成年代を決定することで過去の地球環境変動の復元が可能になるのではないかと期待されている。いくつかの先行研究によって、成長速度推定に古地磁気学的手法も適用可能ではないかということが示されつつある。Chan et al. (1985) では、北太平洋(30oN,140oW) から採取されたマンガンクラストを厚さ1 mmの薄板状試料群に整形し、古地磁気学的手法を用いて測定を行い、13枚の試料に6回の極性反転の記録を確認した。Linkova and Ivanov (1993) では、天皇海山列の雄略海山 (32oN,172oE) から採取されたマンガクラストを厚さ2~4 mmの試料群に整形し、測定を行い、10枚の試料に6回の極性反転の記録を確認した。Joshima and Usui (1998)では、西七島海嶺(31-32oN,138-139oE) から採取されたマンガンクラストを厚さ2.5 mmの試料群に整形し、測定を行い、19~29枚の試料に7-10回の極性反転の記録を確認した。Oda et al. (2011)では、SQUID顕微鏡を用い、85 μmという高分解能での磁気測定の結果を地磁気極性年代表と矛盾なく対比することに成功し、独立に10Be/9Be法で推定された成長速度(6.0±0.2 mm/Ma)と整合的な結果(5.1±0.2 mm/Ma)を得た。
本研究では、北西太平洋5地点(琉球海溝・流星海山・半沢海山・拓洋第5海山・ノサップ断裂帯)から採取されたマンガンクラスト試料を対象とし、普遍的に地磁気逆転が記録されているか検証を行った。逆転が記録されているならば、試料の古地磁気極性層序が古地磁気極性年代表と対比可能か検討し、成長速度の推定を試みて、10Be/9Be法によって独立に推定されている成長速度との比較を行った。具体的には、採取された試料から成長縞に平行に0.5~1.0 mm厚の薄板状試料(各15~27 枚)を切り出し、自然残留磁化の段階交流消磁および測定を行い、初生磁化方位の分析結果に基づき、古地磁気極性を判定した。
測定・分析の結果、全地点の試料の最表層部に共通して正帯磁層がみられ、さらに表層から深部にかけて2~8回の極性反転が確認できた。先行研究の結果も合わせると、北西太平洋に分布するマンガンクラストは普遍的に地磁気逆転を記録していると判断できる。各試料に共通して確認できた最表層部の正帯磁層がブルーン正磁極期(0~0.78 Ma)に対応すると考え、最表層の年代をゼロと仮定して、試料ごとに最表層部の成長速度を算出すると、成長速度は2.1-5.0 (mm/Ma)となった。成長速度を一定だと仮定して、推定成長速度からMatuyama/Gauss境界(2.58 Ma)・Gauss/Gilbert境界(3.596 Ma)に対応する深度を算出し、古地磁気極性年代表と比較した結果、2試料は整合的な対比が可能であった。一方、その他の試料では整合的な対比は不可能であった。このことから、マンガンクラストの成長速度は最表層部とそれ以深では変化しているものが多い可能性が高いことが示された。さらに、本研究によって推定した成長速度を10Be/9Be法による推定成長速度と比較したところ、4地点において整合性がみられた。古地磁気学的手法が成長速度推定に潜在的に適用可能である事が改めて示されたといえる。