17:30 〜 17:45
[PEM27-02] あけぼの衛星サウンダー観測データに基づく電離圏電子密度構造の研究
キーワード:電離圏, トップサイドサウンダー, トラフ
極域電離圏の電子密度構造は、磁気圏・電離圏結合過程の結果として生じるプラズマ対流による輸送過程と、太陽紫外線ならびに磁気圏由来の高エネルギー電子の降込みに起因した電離生成過程、および解離再結合をはじめとする消滅過程とのバランスにより、多様な時間・空間変動を示すことが明らかとなっている。本研究では、あけぼの(EXOS-D)衛星搭載サウンダーの観測データに基づいて、電離圏トラフの電子密度および電子、イオン温度の高度分布を調べた。
あけぼの衛星には、電離圏電子密度の高度プロファイル遠隔探査を目的としてPlasma Wave detectors and Sounder (PWS)が搭載されている。そのサブシステムであるStimulated Plasma Wave experiments (SPW) は、0.3 MHz から 11.4 MHz まで周波数を掃引しながらパルス波を送信して、電離圏からのエコーならびに衛星周辺で生じるプラズマ共鳴を計測する[Oya et al., 1990]。SPWによって32 秒毎に取得されるイオノグラムから、エコーの周波数と遅延時間を読み取り、電離圏各高度でこれらに合致するような電磁波の群速度を求めることによって、電離圏プラズマ密度の高度分布が得られる。本研究では特にEISCATレーダーのあるトロムセー(69.58°N、19.23°E)上空付近を通過する軌道で得られたイオノグラムに着目して解析を行った。その結果、電子密度が局所的に50 %以上減少する電離圏トラフを2例同定した。1995年2月28日に(65°N、15°E)で観測された例をイベント1、1995年3月1日に(70°N、35°E)で観測された例をイベント2と呼ぶ。同時刻のEISCAT UHF レーダーの観測データから下部電離圏では電子密度が減少していないことが確認された。
次に本研究では、同定された2例のイベントについて解析を行い、イオノグラムから電子密度の高度プロファイルを導出し、スケールハイトを算出した。解析の結果、密度減少領域では周囲と比べてスケールハイトが20%前後小さくなっていることが示された。両極性拡散による拡散平衡を仮定して500km高度でのイオンと電子の温度の和を見積もると、イベント1ではトラフ外では5730 Kであるのに対しトラフ内では3730 K、イベント2ではトラフ外では3290 Kであるのに対しトラフ内では2940 Kに減少していた。電離圏トラフにおける電子密度の減少を生じさせる物理過程としては、過去の研究では温度上昇による解離再結合の促進が指摘されている[e.g., Williams and Jain, 1986]。一方,本研究で同定したイベントでは温度はむしろ減少しており、典型的な電離圏トラフとは異なる形成過程の寄与が示唆される。但しイベント1に関しては、トラフが観測された地方時においてIRI-2012モデルから得られる電離圏温度が約3000 Kであることから、解離再結合が促進され、電子密度減少領域が現れた可能性が指摘される。本発表では、上記の同定されたイベントとその解析結果を示すと共にスケールハイトの相違が温度以外の要因(イオン組成等)もしくは温度の時間変化(地磁気活動等)に依存している可能性についても議論する。
あけぼの衛星には、電離圏電子密度の高度プロファイル遠隔探査を目的としてPlasma Wave detectors and Sounder (PWS)が搭載されている。そのサブシステムであるStimulated Plasma Wave experiments (SPW) は、0.3 MHz から 11.4 MHz まで周波数を掃引しながらパルス波を送信して、電離圏からのエコーならびに衛星周辺で生じるプラズマ共鳴を計測する[Oya et al., 1990]。SPWによって32 秒毎に取得されるイオノグラムから、エコーの周波数と遅延時間を読み取り、電離圏各高度でこれらに合致するような電磁波の群速度を求めることによって、電離圏プラズマ密度の高度分布が得られる。本研究では特にEISCATレーダーのあるトロムセー(69.58°N、19.23°E)上空付近を通過する軌道で得られたイオノグラムに着目して解析を行った。その結果、電子密度が局所的に50 %以上減少する電離圏トラフを2例同定した。1995年2月28日に(65°N、15°E)で観測された例をイベント1、1995年3月1日に(70°N、35°E)で観測された例をイベント2と呼ぶ。同時刻のEISCAT UHF レーダーの観測データから下部電離圏では電子密度が減少していないことが確認された。
次に本研究では、同定された2例のイベントについて解析を行い、イオノグラムから電子密度の高度プロファイルを導出し、スケールハイトを算出した。解析の結果、密度減少領域では周囲と比べてスケールハイトが20%前後小さくなっていることが示された。両極性拡散による拡散平衡を仮定して500km高度でのイオンと電子の温度の和を見積もると、イベント1ではトラフ外では5730 Kであるのに対しトラフ内では3730 K、イベント2ではトラフ外では3290 Kであるのに対しトラフ内では2940 Kに減少していた。電離圏トラフにおける電子密度の減少を生じさせる物理過程としては、過去の研究では温度上昇による解離再結合の促進が指摘されている[e.g., Williams and Jain, 1986]。一方,本研究で同定したイベントでは温度はむしろ減少しており、典型的な電離圏トラフとは異なる形成過程の寄与が示唆される。但しイベント1に関しては、トラフが観測された地方時においてIRI-2012モデルから得られる電離圏温度が約3000 Kであることから、解離再結合が促進され、電子密度減少領域が現れた可能性が指摘される。本発表では、上記の同定されたイベントとその解析結果を示すと共にスケールハイトの相違が温度以外の要因(イオン組成等)もしくは温度の時間変化(地磁気活動等)に依存している可能性についても議論する。