日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG31] 宇宙科学・探査の将来計画と関連する機器・技術の現状と展望

2015年5月27日(水) 16:15 〜 18:00 202 (2F)

コンビーナ:*平原 聖文(名古屋大学太陽地球環境研究所)、小嶋 浩嗣(京都大学生存圏研究所)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、鈴木 睦(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部)、座長:小嶋 浩嗣(京都大学生存圏研究所)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)

17:00 〜 17:15

[PCG31-07] 深宇宙探査技術実験機DESTINY による太陽系探査の検討

*岩田 隆浩1川勝 康弘1村上 豪1江副 祐一郎2亀田 真吾3桂華 邦裕4荒井 朋子5松浦 周二1佐伯 孝尚1今村 剛1小郷原 一智6 (1.JAXA 宇宙科学研究所、2.首都大東京、3.立教大、4.名古屋大、5.千葉工大、6.滋賀県立大)

キーワード:イプシロンロケット, DESTINY, 太陽系探査, 深宇宙, ラグランジュ点

低コスト化による打ち上げ機会増加を目指して開発されたイプシロンロケットは、太陽系探査の機会を大幅に増やすために有効な手段となり得る。その一方で既存の小型衛星バスでは、地球周回から離れた深宇宙での理学観測には、搭載可能質量などの大きな制約があった。この問題を克服するために、深宇宙探査技術実験機DESTINY (Demonstration and Experiment of Space Technology for Interplanetary Voyage)による、深宇宙に至る軌道投入・軌道制御技術、信頼性を向上させた大型イオンエンジン、薄膜軽量太陽電池パネルなど、様々な新規技術の実証が計画されている。我々はDESTINY実証機で搭載可能な10kgの理学観測機器、および将来の現行ならびに能力増強型イプシロンロケットを用いたDESTINY応用ミッションにより、達成が見込まれる深宇宙での探査ならびにスペース天文観測を示す。
 DESTINY実証機は、月までのスパイラル高度上昇軌道、月スイングバイを経由して、太陽-地球系ラグランジュ点L2またはL1のハロー軌道に到達し、その場で軌道が維持される。この間のイオンエンジン停止期間には、各種工学実験とともに理学観測が可能である。観測機器としては、X線望遠鏡、ジオコロナ紫外線望遠鏡、高速中性粒子(ENA)カメラによる地球磁気圏全貌の観測、ダスト分析器、ハイビジョンカメラ、熱赤外イメージャ、小型望遠鏡による星間・惑星間ダスト、地球近接小天体(NEO)、月面衝突発光現象の観測、系外惑星紫外線望遠鏡による太陽系外惑星系からのLyα線観測などを提案する。
 一方、現行イプシロンロケットを用いた応用ミッションでは、搭載機器(理学観測機器のほかに、これを支援する目的のバス機器を含む)への質量配分は50kgに増大される。探査範囲は地球近傍から火星または金星のフライバイまで拡張可能となる。この段階に対して、地球圏プラズマ撮像、小惑星Phaethonフライバイ、黄道面外からの宇宙背景放射観測、紫外線望遠鏡による太陽系外惑星観測などを提案する。さらに、イプシロンロケットにM-Vロケットと同等程度の打ち上げ能力を持たせることにより、搭載機器への質量配分は200kgとなるとともに、探査範囲は、地球近傍から火星または金星の周回軌道まで可能となる。この段階に対して、オービタ間の電波掩蔽による金星気候探査、火星気象衛星と火星航空機によるダスト輸送メカニズムの解明などを提案する。