日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS27] 津波とその予測

2015年5月27日(水) 14:15 〜 16:00 A04 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*林 豊(気象研究所)、行谷 佑一(独立行政法人 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、座長:遠山 信彦((独)防災科学技術研究所)

15:15 〜 15:30

[HDS27-15] 2011年太平洋沖東北津波の検潮観測により明らかにされたチリ、ハワイ諸島からの反射波の最大水位分布

*阿部 邦昭1岡田 正実2林 豊2 (1.なし、2.気象研究所)

キーワード:2011年太平洋沖東北津波, 反射波, 最大水位, チリ, ハワイ諸島

(はじめに)2011年東北沖太平洋津波の反射波を検潮記録から抽出し、その最大水位の空間分布を調べた。卓越する反射波は振幅の大きい場所から放射されるとすると、ハワイ諸島、チリ、カリフォルニア海岸などが候補になる。これらの候補地を反射波の波源として伝播図を作成し、走時を計算すると、津波波形で振幅が増大する時刻にほぼ合致することが認められる。著者らはこの方法でチリの反射波が日本に到達したことを指摘してきた(岡田他、2014)。今回、この解析を全太平洋に拡大し、チリ以外の反射波も含めてその空間分布の性質を調べた。
(方法)使用したデータはITICによってまとめられた3月11日から13日までの3日間の1分間隔デジタルデータである。この中から地域的な偏りがないように66点を選び、発震時から64.3時間の水位記録を取り出し、潮汐を数値フィルターで除外して津波波形とした。反射波の開始点はチリの場合はチリ中央部海岸、ハワイ諸島の場合はミッドウエイ島とした。継続時間として、前者の場合はチリ中央部バルパライソの初動から最大波までの時間の5.9時間を、後者はミッドウエイ島とハワイ島からの反射波の到来の時間差を用いた。後者では観測点の方位によって継続時間が異なる。これらの時間内で得られた最大水位を反射波の最大水位としてこれを求め、その空間分布の特徴を調べた。
(結果)チリからの反射波において、最大水位を3階級に分類して地図上に示したのが図1である。震央は星で、反射体の位置は点線で示してある。これをみると反射波は中央アメリカの太平洋海岸にむけて強く放射される一方、ハワイ諸島、日本、ニュージーランドにも大きなエネルギーを伝えている。しかし日本でも串本、尾鷲では振幅が大きいのに、土佐清水、花咲では小さい。これら一連の事実を矛盾なく説明するには分布の仕方だけでなく、島の中の観測点の位置、固有周期などの要素を考慮する必要がある。一方、ハワイ諸島の反射波は日本や中南米で最大値が大きく、これはハワイ諸島の延びる方向の延長線方向にあたっている。これに対し直交する方向では卓越した場所が少ない。延長線方向は波源に直交する方向でもあるので、コヒーレントな波が放射された方向である。したがって、ハワイ諸島は来る波に対しては反射・散乱体として作用し、通過する波に対してはレンズ効果を発揮して、この方向で振幅を増加させるよう働いた。なお延長線方向から隔たったアリューシャン列島西部、パプアニューギニアでも反射が卓越した事を指摘しておく。この2つの反射波の他に、カリフォルニア海岸、アリューシャン列島、パプアニューギニアなどからの反射波が観測されたことを、同じ議論によって説明できる。