日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT29] 環境リモートセンシング

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 101B (1F)

コンビーナ:*作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、近藤 昭彦(千葉大学 環境リモートセンシング研究センター)、長谷川 均(国士舘大学 文学部)、桑原 祐史(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、石内 鉄平(明石高専 都市システム工学科)、座長:石内 鉄平(明石工業高等専門学校)

09:00 〜 09:15

[HTT29-01] 中国の山西省におけるAMSR-Eによる土壌水分の時空間変動に関する研究

*ソン バイ1艾 麗坤2開發 一郎3近藤 昭彦4 (1.千葉大学大学院理学研究科、2.中国科学院大気物理研究所、3.広島大学総合科学部自然環境科学、4.千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

キーワード:土壌水分, AMSR-E, 検証, 山西省

地域において、水・エネルギー循環に大きな影響を与える要素の一つである土壌水分量の推定はリモートセンシングに課せられた重要な課題であり、衛星を用いたマイクロ波リモートセンシングは、土壌水分の広域情報収集のための有効な手段となっている(小池ほか, 2004)。2002年に打ち上げられた米国のAQUA 衛星に日本のセンサーであるAMSR-Eが搭載され、土壌水分量などの主に水循環に関係する物理量をグローバルスケールで推定することができるようになった。このデータセットはモンゴルにおける地上観測の土壌水分との比較により精度の検証が行われており、モンゴルにおける土壌水分の時空間変動を捉えることができた(小池ほか, 2004)。今後、AMSR-Eによる土壌水分は多様な気候、植生、水文環境のもとで検証する必要があるが、地上観測地点における土壌水分測定結果との比較は十分ではない(Kaihotu et al., 2009)。そこで、本研究では土壌水分量の地上観測データが得られている中国の山西省において、AMSR-Eによる土壌水分との比較を行うとともに、標高、勾配、降水量、植生指標、土地利用といった地表面の属性と対応させて土壌水分量の特性を明らかにすることを目的とする。
1)AMSR-Eによる土壌水分の推定値と地上観測結果の比較
山西省では10月から翌年の3月にかけて、積雪が存在し、AMSR-Eによる土壌水分推定に影響するので、この期間を避けて土壌水分量を解析した。2006年および2007年4月28日から9月18日までの地上で土壌水分量が測定されている日付を対象として、AMSR-Eによる土壌水分量と地上観測土壌水分量の相関係数の分布図を作成した。全域の相関係数は-0.54~0.80の範囲にあり、2年間連続して相関係数の高い(0.5~0.8)地点は南部の盆地地域で分布している。この地域では山西省の中でも最も標高が低い(平均は500m以下)地域である。ここではAMSR-Eによる土壌水分は実態の土壌水分をよく捉えていると言える。2年間連続して相関係数の低い(0.3以下)地点は主に北部地域に位置し、平均標高は1100m以上であった。相間係数が2年間連続して低い原因としては、観測点の距離が長く、平均した実測土壌水分量にバイアスが生じたことが原因のひとつとして考えられる。中国1kmメッシュの土地利用図から、北部のDatong、ShuozhouとXinzhouでは畑、農村居住地、城鎮用地、有林地と高被覆率草地など多様な土地利用タイプが混在している。山西省の北部の土地利用の複雑性と関わっていると考えられる。また、中部の地域では2006年の相関係数は高いが、2007年には低い値が得られた。
2)AMSR-Eによる土壌水分の時空間分布
2006年および2007年の夏季(7月、8月、9月)各月の初旬の最大土壌水分分布図から、時間的な変化についてはAMSR-Eによる土壌水分量が7月から8月にかけて増加し、9月になると徐々に減少している傾向が見られる。空間的に見ると北部は南部より、西側は東側より、AMSR-Eによる土壌水分が低くなっている。特に南部のYuncheng盆地地域は全期間に通して、高い値が維持している。
3)AMSR-Eによる土壌水分と降水量の時系列
日降水量は地表面の土壌水分量の日々変動の重要な要因である。広域のAMSR-Eによる土壌水分の時空間分布を捉えてうえで、代表地点を選択し、2006年および2007年4月から9月まで土壌水分量と降水量の時系列ダイヤグラムを作成した。降水無い時はAMSR-Eによる土壌水分の値は0.05g/cm3近くを維持し、降水のイベントとAMSR-Eによる土壌水分量の変動は良く一致している。両者の相関係数はそれぞれ0.65、0.42、0.52、0.31、0.53を示し、一定の程度の相関がある。選択した5地点ではAMSR-Eによる土壌水分と降水量の両者は2年間のトレンドもほとんど同じ傾向を示している。AMSR-Eによる土壌水分のピークはAPHRODITE降水量の変化に対応しているように見えるが、合わないピークも存在する。それはAMSR-Eによる土壌水分とAPHRODITEによる降水量の観測タイミングが異なる可能性が高い。
4)植生指標と土壌水分の関係
 山西省全域のNDVIの平均値は7、8、9月にそれぞれは0.49、0.56、0.61であり、増加している傾向が見られる。AMSR-Eによる土壌水分量の空間分布と対応して、総合的にNDVIがAMSR-Eによる土壌水分量とともに北部から南部にかけて、西側から東側にかけて徐々に増加している特徴が見られた。具体的な関係は今後の課題として検討する。