18:15 〜 19:30
[AHW26-P02] 中国白洋淀流域における富栄養化要因の空間解析
キーワード:生態系サービス, 水質汚染, 水域, 湿原植生
白洋淀は豊かな自然に恵まれていることから「華北の玉」と呼ばれており、周辺地域の生活用水や産業用水の水源となっている。さらに洪水の抑止、水質浄化、生物多様性の保全などの生態系サービス機能を有していると考えられる。しかし、現在では白洋淀の水質汚染と水不足は深刻な社会問題となっており、生態系サービス機能は劣化している。
一方、中国の経済発展に伴い白洋淀上流域の郷鎮企業が増えている。同時に白洋淀周辺地域の人口も増加し、宅地開発も進行している。また、従来からの畑作も重要な地域の産業となっている。これに伴い、白洋淀流域における水資源の需要量は年々増加している。乾燥地域である白洋淀では、近年降水量が減少していること、また上流域におけるダム建設によって地表水がせき止められたため、白洋淀の水の貯留量も減り、何度も枯渇を経験している。
本研究の研究地域は中国河北省に位置する閉鎖性水域である白洋淀とその流域である。白洋淀は上流の太行山地に発する9本の河川水を集めて、最終的に渤海湾に流れこむ。沼沢地域には約3700本のクリークが掘削され、河道で連結される146個の大きさの湖沼群が形成されている。総面積は366平方キロメートルであり、湖沼群中の島と湖畔には、36の村がある。流域の気候は温帯大陸性モンスーン気候に属し、冬季は寒く乾燥し、夏季は暑く雨も多い。年平均降雨量は563.9mmであり、年可能蒸発散量(蒸発パンによる計測)は1369mmである。年降水量の80%が6~9月にかけて降り、降雨量の過多によって白洋淀の水量も大きく変化する。
白洋淀は自然の湿地であり、湿地は多様な機能、すなわち生態系サービス機能を有している。そのため、適切な保全が必要とされているが、湿地の水資源は農業や地域の産業に有効利用し、生産の向上に貢献することも重要である。本研究では生態系サービスの保全に資することを目標として、衛星データによる白洋淀の湿原の植生の変動と水面積の変化を明らかにし、また、水質項目の現地観測を行い、白洋淀の水域、湿原植生の現状との関係を明らかにすることを目的とする。
1980年頃と2000年頃の中国1kmメッシュ土地利用データによると、白洋淀流域の宅地及び工業用地は増加し、耕地は山地域と中流で増加の傾向にあるが、平野域では減少している。耕地の減少域は宅地及び工業用地の増加域に対応している。
また、時系列衛星リモートセンシングデータを用いて、1989年から2001年の白洋淀の水域と湿原植生の変化を解析した。その結果、白洋淀の水面積と湿原の植生は経年的に減少傾向にあり、減少分は埋立による宅地開発と畑地開発によることが明らかとなった。特に、白洋淀の上流域で減少面積が大きかった。また、白洋淀に当初存在した大面積の水域は、小さな水域に分断されたことも明らかとなった。
現地採水調査により明らかにされた全窒素、全リン、硝酸性窒素などの濃度分布では白洋淀の入水口が排水口より高いことが明らかとなった。2010年4月、6月、9月と2011年9月の水質分布を比較すると、9月の各濃度は4月、6月より低くなっていた。また、透視度は入水口の透視度が中央と排水口より低かった。このような水質項目の濃度分布および季節変化は白洋淀の上流からの物質負荷、湖内における湿原植生の浄化機能、降水量の季節分布によって説明可能である。
白洋淀は都市に近接した閉鎖性水域であり、閉鎖性水域の水問題は世界共通の課題となっている。日本においても大都市に近接する閉鎖性水域の汚染は解決すべき重要な課題であり、水質汚濁防止法や湖沼水質保全特別措置法により水質の改善に努めているところである。今後は世界各地の閉鎖性水域との比較水文学的研究を推進することにより、地球環境問題としての湖沼の水環境問題を捉えていく予定である。
一方、中国の経済発展に伴い白洋淀上流域の郷鎮企業が増えている。同時に白洋淀周辺地域の人口も増加し、宅地開発も進行している。また、従来からの畑作も重要な地域の産業となっている。これに伴い、白洋淀流域における水資源の需要量は年々増加している。乾燥地域である白洋淀では、近年降水量が減少していること、また上流域におけるダム建設によって地表水がせき止められたため、白洋淀の水の貯留量も減り、何度も枯渇を経験している。
本研究の研究地域は中国河北省に位置する閉鎖性水域である白洋淀とその流域である。白洋淀は上流の太行山地に発する9本の河川水を集めて、最終的に渤海湾に流れこむ。沼沢地域には約3700本のクリークが掘削され、河道で連結される146個の大きさの湖沼群が形成されている。総面積は366平方キロメートルであり、湖沼群中の島と湖畔には、36の村がある。流域の気候は温帯大陸性モンスーン気候に属し、冬季は寒く乾燥し、夏季は暑く雨も多い。年平均降雨量は563.9mmであり、年可能蒸発散量(蒸発パンによる計測)は1369mmである。年降水量の80%が6~9月にかけて降り、降雨量の過多によって白洋淀の水量も大きく変化する。
白洋淀は自然の湿地であり、湿地は多様な機能、すなわち生態系サービス機能を有している。そのため、適切な保全が必要とされているが、湿地の水資源は農業や地域の産業に有効利用し、生産の向上に貢献することも重要である。本研究では生態系サービスの保全に資することを目標として、衛星データによる白洋淀の湿原の植生の変動と水面積の変化を明らかにし、また、水質項目の現地観測を行い、白洋淀の水域、湿原植生の現状との関係を明らかにすることを目的とする。
1980年頃と2000年頃の中国1kmメッシュ土地利用データによると、白洋淀流域の宅地及び工業用地は増加し、耕地は山地域と中流で増加の傾向にあるが、平野域では減少している。耕地の減少域は宅地及び工業用地の増加域に対応している。
また、時系列衛星リモートセンシングデータを用いて、1989年から2001年の白洋淀の水域と湿原植生の変化を解析した。その結果、白洋淀の水面積と湿原の植生は経年的に減少傾向にあり、減少分は埋立による宅地開発と畑地開発によることが明らかとなった。特に、白洋淀の上流域で減少面積が大きかった。また、白洋淀に当初存在した大面積の水域は、小さな水域に分断されたことも明らかとなった。
現地採水調査により明らかにされた全窒素、全リン、硝酸性窒素などの濃度分布では白洋淀の入水口が排水口より高いことが明らかとなった。2010年4月、6月、9月と2011年9月の水質分布を比較すると、9月の各濃度は4月、6月より低くなっていた。また、透視度は入水口の透視度が中央と排水口より低かった。このような水質項目の濃度分布および季節変化は白洋淀の上流からの物質負荷、湖内における湿原植生の浄化機能、降水量の季節分布によって説明可能である。
白洋淀は都市に近接した閉鎖性水域であり、閉鎖性水域の水問題は世界共通の課題となっている。日本においても大都市に近接する閉鎖性水域の汚染は解決すべき重要な課題であり、水質汚濁防止法や湖沼水質保全特別措置法により水質の改善に努めているところである。今後は世界各地の閉鎖性水域との比較水文学的研究を推進することにより、地球環境問題としての湖沼の水環境問題を捉えていく予定である。