12:39 〜 12:42
[SSS29-P04] SEM-EBSDを用いた結晶方位解析における試料前処理条件の検討:花崗岩中の石英結晶を例に
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:走査型電子顕微鏡後方散乱電子回折法, コロイダルシリカ, 振動研磨, 薄片
後方散乱電子回折法(EBSD)は,結晶性の試料に電子線を照射し,後方散乱する回折電子像のパターン(EBSP)を解析することにより結晶方位を特定する手法である.近年,地質学分野においても,走査型電子顕微鏡(SEM)に取り付けられたEBSDを用いた岩石試料の結晶方位解析や,層状物質の積層構造の解析などが行われている.岩石試料のSEM-EBSD解析では,主に薄片を用いる.EBSD分析では,EBSPに寄与する入射電子の進入深さが数10 nmまでとされており,硬い研磨剤の使用によるダメージ層の存在は,EBSPのコントラストを大きく減少させる.そのため,SEM-EBSD用の試料は,通常の薄片作製によるダイヤモンドペースト鏡面研磨を行った後に,イオンミリングやコロイダルシリカを用いた振動研磨によりダメージ層を除去する測定面の仕上げが推奨されている(小暮・立川,2002; Prior et al., 1999).なお,一般的な岩石薄片表面のダメージ層除去の仕上げには,コロイダルシリカを用いた振動研磨が最も適しているとされている(例えばLloyd, 1987).ただし,コロイダルシリカを用いたEBSD用試料の研磨については,具体的な処理手順および最適な処理方法に関する報告はあまり知られていない.また,岩石薄片を作製する際に,作製者の技量により薄片が片減りすることがある.片減りした薄片もEBSD分析に影響を及ぼす恐れがあるが,片減りの影響に関する報告もない.
そこで,岩石薄片におけるコロイダルシリカによるSEM-EBSD用試料の前処理条件を検討することを目的とし,造岩主要鉱物の1つである石英を多く含む花崗岩を例に,コロイダルシリカの最適研磨条件に関する検討を行った.具体的には,コロイダルシリカ振動研磨の研磨時間および研磨時に試料にかける荷重について検討を行った.また,意図的に片減りさせた薄片を用意し,片減りがどの程度EBSD分析に影響を及ぼすかについての検討も行った.
コロイダルシリカによる振動研磨は,BUEHLER社製VibroMet2研磨装置を用いた. またコロイダルシリカ溶液はPRECISION SURFACES INTERNATIONAL(PSI)社(代理店 株式会社 三啓)コロイダルシリカ最終仕上げ用(型番: 5904-S-64,pH: 9.8,粒径: 40 nm)を使用した.コロイダルシリカを用いた振動研磨の最適条件を決めるうえで,重要となるパラメータとして,①振動研磨時間,②試料にかける荷重,③振動強度,がある.今回の報告では,これらのパラメータのうち,①および②に対して検討を行った.具体的には,①については,振動研磨を1時間,2時間,3時間行った場合の研磨具合の違いについて検討した.②については,装置に付属の錘(約200g)を1個使用した場合と3個使用した場合の研磨具合の違いについて検討した.③の振動強度については,中間値である50%に固定して振動研磨を行った. EBSD測定は,早稲田大学所有のSEM(日立ハイテクノロジーズ製S-3400N)および,同SEMに取り付けられているEBSD 検出器(Oxford Instruments製HKL CHANNEL5)を使用した.入射電子用のSEMフィラメントにはタングステンを用いた.測定用の試料は蒸着を行わず,試料表面の帯電を防ぐために,SEM試料室の真空度を低真空(30Pa)に設定して測定した.また,照射電圧:25 kV,ワーキングディスタンス(WD):30 mmの条件でSEM観察およびEBSD分析を行った.測定の手順としては,まず,それぞれの薄片試料において,後方散乱電子像(BEI)観察により,目視で石英粒子を識別し,ターゲットとする石英結晶に対し,250倍の倍率で,70 μm四方の範囲を2 μm間隔で面分析(1つの結晶につき1225点測定)した.1つの薄片につき20個の石英結晶の面分析を行った.EBSDの評価方法は,面分析の総分析点数に対して,正しく指数付けされた測定点の数をヒット率として定義し,ヒット率が大きいほどEBSDでの測定に適した試料調整ができているとした.
解析の結果,ダイヤモンド鏡面研磨のみの試料ではヒット率の平均値が55%未満であったのに対し,コロイダルシリカ処理を施した試料はすべて70%以上の値を示し,明らかな違いが見られた.コロイダルシリカ処理を施す時間に関しては,処理時間が長い程よい結果が得られたが,最も時間の短い1時間の試料でも,平均値が70%以上の値を示し,1時間の処理で十分であることが明らかとなった.錘の違いによる変化は見られなかった.本結果は,結晶サイズが数100 μm程度の石英粒子のEBSD分析を行う場合のみに適している可能性があり.その他の試料については,目的とする試料に合わせて,最適処理時間を評価する必要があると思われる.
そこで,岩石薄片におけるコロイダルシリカによるSEM-EBSD用試料の前処理条件を検討することを目的とし,造岩主要鉱物の1つである石英を多く含む花崗岩を例に,コロイダルシリカの最適研磨条件に関する検討を行った.具体的には,コロイダルシリカ振動研磨の研磨時間および研磨時に試料にかける荷重について検討を行った.また,意図的に片減りさせた薄片を用意し,片減りがどの程度EBSD分析に影響を及ぼすかについての検討も行った.
コロイダルシリカによる振動研磨は,BUEHLER社製VibroMet2研磨装置を用いた. またコロイダルシリカ溶液はPRECISION SURFACES INTERNATIONAL(PSI)社(代理店 株式会社 三啓)コロイダルシリカ最終仕上げ用(型番: 5904-S-64,pH: 9.8,粒径: 40 nm)を使用した.コロイダルシリカを用いた振動研磨の最適条件を決めるうえで,重要となるパラメータとして,①振動研磨時間,②試料にかける荷重,③振動強度,がある.今回の報告では,これらのパラメータのうち,①および②に対して検討を行った.具体的には,①については,振動研磨を1時間,2時間,3時間行った場合の研磨具合の違いについて検討した.②については,装置に付属の錘(約200g)を1個使用した場合と3個使用した場合の研磨具合の違いについて検討した.③の振動強度については,中間値である50%に固定して振動研磨を行った. EBSD測定は,早稲田大学所有のSEM(日立ハイテクノロジーズ製S-3400N)および,同SEMに取り付けられているEBSD 検出器(Oxford Instruments製HKL CHANNEL5)を使用した.入射電子用のSEMフィラメントにはタングステンを用いた.測定用の試料は蒸着を行わず,試料表面の帯電を防ぐために,SEM試料室の真空度を低真空(30Pa)に設定して測定した.また,照射電圧:25 kV,ワーキングディスタンス(WD):30 mmの条件でSEM観察およびEBSD分析を行った.測定の手順としては,まず,それぞれの薄片試料において,後方散乱電子像(BEI)観察により,目視で石英粒子を識別し,ターゲットとする石英結晶に対し,250倍の倍率で,70 μm四方の範囲を2 μm間隔で面分析(1つの結晶につき1225点測定)した.1つの薄片につき20個の石英結晶の面分析を行った.EBSDの評価方法は,面分析の総分析点数に対して,正しく指数付けされた測定点の数をヒット率として定義し,ヒット率が大きいほどEBSDでの測定に適した試料調整ができているとした.
解析の結果,ダイヤモンド鏡面研磨のみの試料ではヒット率の平均値が55%未満であったのに対し,コロイダルシリカ処理を施した試料はすべて70%以上の値を示し,明らかな違いが見られた.コロイダルシリカ処理を施す時間に関しては,処理時間が長い程よい結果が得られたが,最も時間の短い1時間の試料でも,平均値が70%以上の値を示し,1時間の処理で十分であることが明らかとなった.錘の違いによる変化は見られなかった.本結果は,結晶サイズが数100 μm程度の石英粒子のEBSD分析を行う場合のみに適している可能性があり.その他の試料については,目的とする試料に合わせて,最適処理時間を評価する必要があると思われる.