日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC29] アイスコアと古環境変動

2015年5月26日(火) 14:15 〜 16:00 301A (3F)

コンビーナ:*川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、竹内 望(千葉大学)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)、座長:川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)

14:45 〜 15:00

[ACC29-03] 南極ドームふじコアとドームCコア間の過去21万6千年間の火山同期

*藤田 秀二1F. Parrenin2M. Severi3H. Motoyama1E. Wolff4 (1.情報・システム研究機構 国立極地研究所、2.CNRS, LGGE, F-38041 Grenoble, France、3.Department of Chemistry, University of Florence, Florence, Italy、4.Department of Earth Sciences, University of Cambridge, UK)

キーワード:アイスコア, 年代, ミランコビッチ, ドームふじ, ドームC, 南極

南極の2つの離れた地点、ドームふじ(DF)、ドームC(EDC)で掘削された深層コアについての年代に対する理解を深めるために、これらの年代同期作業をおこなった。合計1401箇所の火山同期タイポイントを、21万6千年の期間をカバーするアイスコア区間について同定した。DFコアの年代は、これを通称DFO2006と呼び、「氷床コアから抽出したガス中のO2/N2比を地球軌道年代のタイムマーカーにして強く束縛し、束縛点間の年代を氷床モデルで内挿した年代」(age-marker-based datingと呼ぶ)であるが、これを、AICC2012と呼ばれる「氷床流動モデルと年代束縛点をあわせた計算から求めた」(glaciological datingと呼ぶ)EDCコアの年代と比較した。2つの年代スケール間の年代ギャップは、多くの年代においては、2千年以下であったが、海洋同位体ステージ(MIS) 5では、大きなギャップがあることが判明した。DFO2006年代は、本来同じ年代であるはずの氷で、AICC2012年代に対し、古い値を示し、その最大値は、MIS 5dで約4,500年、MIS 5bで約3,100年となった。この年代ギャップのピークの存在によって、気候イベント発生期間(duration)の比 DFO2006/AICC2012 は、MIS 6後期~MIS 5の期間において、約85%、MIS 5d - 5b の期間において、約114% となった。私達はさらに、このDFO2006年代を、glaciological dating の手法を用いて導出したドームふじコアの年代であるDFGT2006年代と比較した。DFGT2006年代は、AICC2012年代と同様に、氷床流動モデルと年代束縛点による弱い束縛をあわせた計算から求めたものである。 私達は、 DFO2006年代とDFGT2006年代の年代差の特徴は、DFO2006年代とAICC2012年代の年代差の特徴と非常によく似た特徴をもつことをみいだした。この事実に基づき、私達は、MIS 5の期間においてDFO2006年代とAICC2012年代の間に見いだされた系統的なギャップは、年代決定の手法の差異に何らかの関係があるとの仮説をたてた。これらに加え、私達は、中国で報告されている石筍の年代をDFO2006年代やAICC2012年代と比較した。石筍のもつ年代は、 DFO2006年代と、 MIS 5c や 5d でよく一致した(誤差数百年以内)が、MIS 5bでは年代ギャップが数千年であった。こうした結果から、少なくとも MIS 5cや5dでは、DFO2006年代とAICC2012年代の間に見いだされたギャップの主因は、AICC2012年代にあり、そしてその原因は、氷床流動モデル計算にあたり水同位体の値に基づいて推定した氷床表面マスバランスの見積もりの誤差に起因すると推定した。すなわち、glaciological approachには共通してこの誤差が発生する。アイスコアや石筍の年代マーカーの互換性については、今後慎重な検討を必要とする。