09:15 〜 09:30
[HTT29-02] 中国華北平原における主要農産物の農事暦変化に関する研究
キーワード:華北平原, 農事暦, 冬小麦, 水不足
はじめに
現在、世界の水消費量の70%~80%は、灌漑用水によるものである。水循環プロセスに大きな影響を与える農業生産活動の影響を把握する事は重要な課題であるが、農業用水量を算出するためには、農事暦を知る必要がある(小槻ほか 2012)。華北平原は中国で二番目に広い平原であり、農業灌漑面積は全国の約42%を占めている。一方、一人当たりの水資源量は中国一人当たりの水資源量の15%しか占めていない。そのため、華北平原の水管理は持続可能な農業の課題となっている。そこで、本研究では華北平原の主要農産物の農事暦と作付面積の経年変化を明らかにした。
データと手法
PAL(Pathfinder Advanced Very High Resolution Radiometer Land Data sets)にはAVHRRのチャンネル1(可視)、2(近赤外)、4、5(熱赤外)およびNDVIが含まれている。データの空間分解能は8kmである。時間分解能は10日であり、年間36旬分のデータが存在する。本研究ではNDVIを利用した。冬小麦のNDVI値変化パターンを抽出するために、1982年から2000年のPALデータを利用した。
SPOT VegetationデータセットはSPOT4号・5号に搭載された陸域の植生被覆状況を観測センサーである。ピクセルごとに10日間のNDVIの最大値を選択することにより雲の影響を取り除いてある。時間分解能は10日であり、空間分解能は1kmである。冬小麦のNDVI値変化パターンを抽出するために、1999年から2012年のSOPTデータを利用した。
中国気象科学データサービスセンター(中国气象科学数据共享服?网)でダウンロードした華北平原各省(河北省、山東省、北京、天津)の気象データを利用した。農事暦変化を考察するために各省の気象データを利用した。
SRTM(Shuttle Radar Topography Mission)は2000年2月にNASA(National Aeronautics and Space Administration)、DLR(Deutsches Zentrum fur Luftund Raumfahrt)とISA(Italian Space Agency)によって作成されたDEM(Digital Elevation Model)である。本研究では、DEMを用いた地形解析に基づき冬小麦の分布情報を検証するために使用した。
野外調査によって、60点のトレーニングポイント地点を設定し、この情報を用いて華北平原における土地被覆ごとのNDVI値季節変化パターンを抽出した。その季節変化(フェノロジー)の特徴を利用して農事暦判断と冬小麦の面積を抽出した。
結果
冬小麦の農事暦における播種旬と収穫旬は、年々変動しており、播種時期と収穫時期が解析期間の30年で遅れていることがわかった。また、1982年から2012年までの冬小麦面積の時空間的変化が明らかになり、近年冬小麦の面積が減少する傾向があることが明らかとなった。
考察
秋の平均気温、平均降水量と冬小麦播種旬の変化に正の相関があった。春の平均気温は上昇しているが降水量はあまり変化が無い。そのため、春の蒸発量が多くなり、相対的に農業用水が増加した。華北平原の灌漑水はほぼ地下水であるため、地下水位が低下したが、地盤沈下などの影響のため地下揚水が制限されて、水不足に拍車をかけている。水不足が植物の成長の遅れ、収穫時期の遅れの一要因と考えられるが、中国政府による南水北調による通水が2014年12月12日に始まった。農事暦に対する影響を引き続き観測する必要がある。
抽出した冬小麦の面積と統計年鑑を比較した結果、よく一致することがわかった。標高データと重ね合わせた結果も、山地地帯冬小麦の誤分類がほとんど確認されていないため、本研究の冬小麦面積と分布は精度が高いと考えられる。
まとめ
華北平原は著名な食糧生産地であり、その水不足の問題は世界でも注目されている。本研究では、衛星リモートセンシングにより華北平原の農事暦の変化を明らかにした。華北平原において冬小麦の播種時期と収穫時期が遅れることは、自然要因と人為適要因の両方があると考えられる。水不足等の影響による華北平原の冬小麦面積の減少は報告されているが(許文波 2007)、本研究では、2つの衛星データを用いて、冬小麦の生育パターンに基づき、長期間(30年)の華北平原における冬小麦面積を抽出した。その結果、冬小麦の面積が減少していることが明らかになった。
現在、世界の水消費量の70%~80%は、灌漑用水によるものである。水循環プロセスに大きな影響を与える農業生産活動の影響を把握する事は重要な課題であるが、農業用水量を算出するためには、農事暦を知る必要がある(小槻ほか 2012)。華北平原は中国で二番目に広い平原であり、農業灌漑面積は全国の約42%を占めている。一方、一人当たりの水資源量は中国一人当たりの水資源量の15%しか占めていない。そのため、華北平原の水管理は持続可能な農業の課題となっている。そこで、本研究では華北平原の主要農産物の農事暦と作付面積の経年変化を明らかにした。
データと手法
PAL(Pathfinder Advanced Very High Resolution Radiometer Land Data sets)にはAVHRRのチャンネル1(可視)、2(近赤外)、4、5(熱赤外)およびNDVIが含まれている。データの空間分解能は8kmである。時間分解能は10日であり、年間36旬分のデータが存在する。本研究ではNDVIを利用した。冬小麦のNDVI値変化パターンを抽出するために、1982年から2000年のPALデータを利用した。
SPOT VegetationデータセットはSPOT4号・5号に搭載された陸域の植生被覆状況を観測センサーである。ピクセルごとに10日間のNDVIの最大値を選択することにより雲の影響を取り除いてある。時間分解能は10日であり、空間分解能は1kmである。冬小麦のNDVI値変化パターンを抽出するために、1999年から2012年のSOPTデータを利用した。
中国気象科学データサービスセンター(中国气象科学数据共享服?网)でダウンロードした華北平原各省(河北省、山東省、北京、天津)の気象データを利用した。農事暦変化を考察するために各省の気象データを利用した。
SRTM(Shuttle Radar Topography Mission)は2000年2月にNASA(National Aeronautics and Space Administration)、DLR(Deutsches Zentrum fur Luftund Raumfahrt)とISA(Italian Space Agency)によって作成されたDEM(Digital Elevation Model)である。本研究では、DEMを用いた地形解析に基づき冬小麦の分布情報を検証するために使用した。
野外調査によって、60点のトレーニングポイント地点を設定し、この情報を用いて華北平原における土地被覆ごとのNDVI値季節変化パターンを抽出した。その季節変化(フェノロジー)の特徴を利用して農事暦判断と冬小麦の面積を抽出した。
結果
冬小麦の農事暦における播種旬と収穫旬は、年々変動しており、播種時期と収穫時期が解析期間の30年で遅れていることがわかった。また、1982年から2012年までの冬小麦面積の時空間的変化が明らかになり、近年冬小麦の面積が減少する傾向があることが明らかとなった。
考察
秋の平均気温、平均降水量と冬小麦播種旬の変化に正の相関があった。春の平均気温は上昇しているが降水量はあまり変化が無い。そのため、春の蒸発量が多くなり、相対的に農業用水が増加した。華北平原の灌漑水はほぼ地下水であるため、地下水位が低下したが、地盤沈下などの影響のため地下揚水が制限されて、水不足に拍車をかけている。水不足が植物の成長の遅れ、収穫時期の遅れの一要因と考えられるが、中国政府による南水北調による通水が2014年12月12日に始まった。農事暦に対する影響を引き続き観測する必要がある。
抽出した冬小麦の面積と統計年鑑を比較した結果、よく一致することがわかった。標高データと重ね合わせた結果も、山地地帯冬小麦の誤分類がほとんど確認されていないため、本研究の冬小麦面積と分布は精度が高いと考えられる。
まとめ
華北平原は著名な食糧生産地であり、その水不足の問題は世界でも注目されている。本研究では、衛星リモートセンシングにより華北平原の農事暦の変化を明らかにした。華北平原において冬小麦の播種時期と収穫時期が遅れることは、自然要因と人為適要因の両方があると考えられる。水不足等の影響による華北平原の冬小麦面積の減少は報告されているが(許文波 2007)、本研究では、2つの衛星データを用いて、冬小麦の生育パターンに基づき、長期間(30年)の華北平原における冬小麦面積を抽出した。その結果、冬小麦の面積が減少していることが明らかになった。