日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL37] プレート収束境界における堆積盆形成テクトニクスの新たな展望

2015年5月24日(日) 14:15 〜 16:00 103 (1F)

コンビーナ:*伊藤 康人(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学専攻)、高野 修(石油資源開発株式会社技術研究所)、座長:伊藤 康人(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学専攻)、高野 修(石油資源開発株式会社技術研究所)

15:30 〜 15:45

[SGL37-06] 重力異常および重力勾配テンソルを用いた堆積盆地の構造解析

*楠本 成寿1 (1.富山大学大学院理工学研究部(理学))

堆積盆地をはじめ,様々な地域の地下構造推定には,地震波探査や重力探査がよく用いられ,重力探査は,安価で広範囲の探査を行うことが出来るため,概査としてもよく採用されてきている。重力探査によって得られる重力異常の長所は,低重力異常地域には低密度あるいは厚い堆積層が存在するといった直感的な定性的解釈が容易であることである。定量解析を行うことで,詳細な地下の情報を得ることが可能であるが,解析には多くの時間と先験情報(基本的な構造や密度情報)が必要である。

このようななか,定量解析と定性的解釈の中間ともいえる半自動解釈法というものがある。これは,地質学的,地球物理学的情報を与えずに,重力異常図から,構造境界の位置の情報を取り出す手法である。よく知られている手法は,水平一次微分や鉛直一次微分といった,ハイパスフィルターである。

近年は,航空機を用いた重力偏差計測も盛んに行われるようになり,重力偏差計によって得られる重力勾配テンソルを用いたフィルターや半自動解釈手法が開発されてきている。例えば,重力異常場の曲率を表す重力勾配テンソルのxy成分を用いたShape Index (e.g., Cevallos, 2013)や重力勾配テンソルの固有値を用いたDimensionality Index (e.g., Perdersen and Rasmussen, 1990; Beiki and Pedersen, 2010),固有ベクトルを用いた原因位置推定手法(e.g., Beiki and Pedersen, 2010; Beiki, 2013)などがそれである。

重力勾配テンソルを用いた解析には,重力偏差計によるテンソル各成分の計測が必要であるが,フーリエ領域での積分と微分の組み合わせにより,既存の重力異常から重力勾配テンソルの全成分を計算することが可能である(e.g., Mickus and Hinojosa, 2001)。

本講演では,この手法を用いて重力異常から重力勾配全成分を計算し,重力勾配テンソルを北海道中部の堆積盆地群の構造解釈に応用した結果を報告する。

[文献]
Beiki, M., 2013, Jour. Appl. Geophys., 90, 82-91. Beiki M., and Pedersen, L. B., 2010, Geophysics, 75, I37?I49. Cevallos, C., Kovac, P., and Lowe, S. J., 2013, Geophysics, 78, G81-G88. Mickus, K. L., and Hinojosa, J. H., 2001, Jour. Appl. Geophys., 46, 159-174. Perdersen L. B., and Rasmussen, T. M., 1990, Geophysics, 55, 1558-1566.